第3話 猫との遭遇

市場での騒動から逃れためかぶの妖精は、ふわふわと市場の端っこで風を待ちながら、少し休んでいた。魚や野菜が散乱している光景を見て、妖精は「自分、ちょっとやりすぎたかも」と思いながらも、心のどこかで楽しんでいた。


「さあ、次はどこに飛ばされるかな……」


そうつぶやいていると、背後からふわりとした柔らかい気配を感じた。妖精が振り返ると、そこには大きな三毛猫がじっとこちらを見つめていた。


「にゃー……」


「えっ!?」


その瞬間、妖精は本能的に危機を感じた。猫は何も言わずに、じりじりと妖精に近づいてくる。その目はまるで獲物を見つけたかのように鋭い。


「ちょ、ちょっと待ってよ! 僕は食べ物じゃないよ!」


妖精は必死に逃げようとしたが、風がまだ吹いていない。浮かぶこともできず、その場で転がるように逃げ出した。


「ふわっ! 誰か助けてー!」


猫はじっとりと忍び寄り、妖精を追い詰める。まるで狩りを楽しむかのように、三毛猫は素早く動き、妖精に追いつこうとする。


「や、やめてぇぇぇぇ!」


転がりながら必死に逃げる妖精。猫の前脚が妖精に届く寸前、奇跡的に風がふわっと吹き始めた。その瞬間、妖精はふわりと宙に舞い上がり、猫の手から逃れることができた。


「やった! 助かった!」


空中に浮かぶ妖精を、猫は不満そうな顔で見上げるが、もう手の届かない場所にいる。妖精はほっと胸をなで下ろしながら、再び風に乗って市場の外へと飛んでいく。


「ふぅ……あの猫、本気で僕を捕まえるつもりだったんだろうな……」


妖精は少し怯えながらも、次の目的地に向かって風に身を委ねる。市場の外に出ると、次に漂い着いたのは、港の倉庫街だった。そこには、船の積み荷や漁師たちが忙しそうに働いている風景が広がっている。


「ここも面白そうだなぁ……」


ふわふわと倉庫街の上を漂う妖精。下には人々が仕事に精を出しており、その姿を見ながら何かいたずらを思いついたような笑みを浮かべていた。


「よし、次のターゲットはあそこだ!」


妖精はすでに次の騒動の準備を始めていた。港町での冒険はまだまだ続く。どこへ行っても、彼のいたずら心は止まらない。

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MEKABU 白鷺(楓賢) @bosanezaki92

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