私は何人いるのか

リラックス夢土

第1話 私は何人いるのか

 私の学校では校内マラソン大会があった。

 当初私も参加予定だったが当日生理になった私はマラソン大会には出ないで学校内で先生たちと留守番することになった。


 マラソン大会は地域の人も沿道に出て応援してくれる。

 生徒は学校を出発して町内を走りまた帰ってくる。


 するとマラソンを走り終えた後輩が私の姿を見つけて声をかけてきた。


「△△先輩。途中で応援に来てくれましたよね。ありがとうございます」


「は?」


 私はマラソン大会の時間校内から出ていない。

 走っている最中の後輩を応援できるわけがない。


「私はずっと学校にいたよ」


「え? だって私が走っている時に横を車が通って△△先輩が乗ってたから私が手を振ったら手を振り返してくれましたよね? あれは絶対△△先輩でしたよ」


 この後輩は何を言っているのだろうか。

 だがそれは別人と私を見間違えたのだろう。


 マラソン大会が終わり帰宅途中に知り合いのおばさんに会った。

 おばさんはニコニコしながら私に声をかけてくる。


「△△ちゃん。マラソン大会一生懸命に走っていたね。おばさん、応援したけど分かった?」


「は?」


 今度は私がマラソン大会で走っていただって?

 いや、私は校内にいたからマラソン大会で走っているはずはない。


 後輩といいこのおばさんといい誰と私を間違えているのか。




 時は経ち私は都会に出て生活をしていた。

 駅を目指して歩いていると見知らぬおばさんに声をかけられた。


「あら、○○さんじゃないですか。お元気ですか?」


「は? 私は△△ですけど」


「え? あらいやだ! ごめんなさい。でも○○さんにそっくりねえ」


 そのおばさんは首を何度も捻りながら行ってしまう。


 ○○さんて誰?

 私に似ている人がこの近所に住んでいるのか?




 それから何日かして体調を崩した私はネットで調べた近くの内科の医院に行った。

 そこに行ったのは初めてだったので初診の問診票を記入して診察の順番を待つ。


 診察室に呼ばれて医者と対面した。

 そこは個人の医院とはいえパソコンで患者のカルテを管理している。


 そして私と初対面の医者は私に言った。


「あれ? 初診だって言ってましたがあなたのカルテがありますよ」


「は?」


 そんなはずはない。

 ここは大人になってから住んだ都会の町。

 初めて来た医院に私のカルテがあるはずがない。


 しかしそのカルテを元に私は治療を受けた。

 医院からの帰り道、私は考える。


 私はいったい何人いるんだ?


 いや、単に似たような人がいただけだ。

 だが医院のカルテまで似てるというだけで作れるモノだろうか。


 自宅に帰った私はベッドに横になる。

 するとインターホンが鳴った。


 病気の私は最初は無視していたが何度もインターホンの音が鳴る。

 訪問者は私が出るまで諦めそうにない。


 仕方ない、出るか。


 熱があって頭がボーっとしていた私はインターホンのカメラをよく確認せず扉を開けた。


 そこにいたのは紛れもなく………だった。


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