第4話
一回しか乗ったことのない新幹線の乗り心地はいいもので、車や電車と違い全く振動が少ないため、走っている気がしない。ただひたすらに風景が横に垂直に流れていくだけで、不思議な感覚がした。
叔父さんに買ってもらった駅弁を膝の上に置いて、ただひたすらに流れゆく風景を眺めていた。
「東京が嫌になったら、いつでも秋田へ帰ってきていいからね」
その言葉をきちんと頭の中で咀嚼して、それから返事をなんて言うか深く考えた。
「ああ、はい」
深く考えた答えがこれだった。
私は叔父さんについて行って、東京に行くこととなった。高校受験を一か月後に控えた今こんな決断をしたのは、私ではなく叔父さんだった。秋田にはもう私には血のつながった親戚は父しかいない。
その上私は、中学校に友達がいないし、頼れる人もいない。そんな私を心配してくれたらしい。
「ユキちゃん?」
ハッとして、上を向くと叔父さんが眉を顰め、心配そうにこちらを見ていた。
「大丈夫?」
「だ、大丈夫です」
「ほとんど何も食べてないでしょ。食べれたらた食べなね」
なんでこの人はこんなに心配そうにしているんだろう。
よくわからないけれど、私は頭の中に霧がかかってしまったみたいにもやもやとしてはっきりしない。上手く考えられないし、周りがうるさかったりすると、相手の言っていることがよくわからない。
駅弁の蓋を開けて、中を見てみると、私が好きなエビの天ぷらが入っていた。その油をいっぱいに吸った天ぷらをしばらく私は眺めていた。
そして心の中で思った。マズそうだな、と。今までこんなこと想ったこと無いけど、油を吸った天ぷらがとても不味そうに思えた。
だから私は天ぷらを残して、ナスとレンコンと、ご飯を少しだけ食べて、お茶を飲んだ。
本当にぼうっとしていることしかできなくて、ただ外を眺めていただけなのだけれども、いつの間にか眠っていたらしく、目が覚めた時、窓の外は夕方になり始めていた。
そこは山も遠くビルばかりだった。
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