第2話

 火葬が終わった後、話は私の親権の話となった。通常となれば、離婚した父が当然のように親権を貰うはずだ。普通、離婚していたとしても父親の親権が自動的に復活するから。

 でも問題は父は私のことを虐待していたことがあるということ。

 地獄だ。母が死んで、大嫌いな父の元へ行かなくてはならず、父の元へ行くということは、一日五時間以上の勉強漬けの毎日がまた始まる。

 嫌だ。嫌だ。絶対に嫌だ。

 だから私は、考える事をやめて、トイレにこもって呆然としていた。とりあえず、今逃げられる場所へ私は逃げていた。

「ユキちゃん?いるかな?」

 トイレの入り口からそういう声が聞こえてきた。先ほどの叔父の優しい声だった。きっと心配して声をかけてきてくれたのだろう。

 トイレから出て私はトイレの入り口へ向かった。

「少しだけ話をしても大丈夫?」

 俯いて足を見つめたまま、私はコクリと頷いた。

「うん、その、ユキちゃんの親権の話なんだけど。その、柳原さん、君のお父さんは君に、あの心身に傷を負わせたよね」

「まあ、はい」

「それで、虐待歴のある父親に子供を預けるっていうのは家庭裁判所は許してくれないと思うし。何よりユキちゃんの心がすごく心配なんだ。それで叔父さん、お金あるし、ちゃんとメンタルケアできると思うし、その叔父さんのところにこない?」

 一瞬その言葉が上手く頭で処理できず「は?」と顔を上げてポカンとしていたと思う。

「もちろん、ユキちゃんが選んでいいんだよ。施設に入るって言うのも一種の手だし、里親制度で、家庭裁判所が判決出すまでに里親(仮)に預かってもらうってのもあるから。別に叔父さんのところに来なくてもいいんだけど」

 あたふたと叔父さんは両手を動かしてから、はっきりと私のことを見た。

「とにかく僕はユキちゃんの味方だから」

 とにかく心強い言葉だった。

 私は一つの温かい味方が出来たような気がして「はい」と返事をした。

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