第7話 ダブルデート
首都圏の遊園地と言えば?
そう、相模湖M〇RIM〇RIである。
ディ〇ニーや富〇急など、にわかの極み。
あれらは受動的な体験を主としており、ジャンルとしては映画鑑賞に近い。映画を観るために、どうして人が密集した場所へ行き、何時間も並ぶ必要があるのだろう。
その点、相模湖は違う。SASUKEを模したアトラクションなどの能動的な体験が主となっている。
そして何より、人が少ない! うんざりするような行列を避け、仲間達と素晴らしい時間を共有することができるのだ! タイパ最高!
さらにさらに!
施設内には温泉がある!
諸君はアトラクション風呂をご存知だろうか。
ブクブク水が出て体をマッサージしてくれるアレである。
あのブクブク正直めっちゃ痛くない?
しかし繊細なナノ水が用いられている場合は違う。全く痛くないのだ!
以上。これが……!
相模湖M〇RIM〇RIである!
* 風間雅 *
ねっ、あの集団やばくない?
ビジュやば! でも……端のメガネは何者?
荷物持ちじゃない?
たまたま近くにいる他人かもよ。
――という声を聞きながら、俺は駅のホームで電車を待っていた。
隣には幼馴染の花恋が立っており、その先にオタクくんと莉子が居る。
過去1か月において、俺は莉子を4回デートに誘ったが、4回とも「え、無理」と断られている。
しかし、突如として莉子から誘いを受けた。
ダブルデートという形ではあるけれど、これは確かなチャンスだ。
唯一の懸念点は……。
(……なぜ花恋が参加している?)
俺の幼馴染であり、オタクくんの想い人でもある。
その事実を知っている俺からすれば、ダブルデートとしては完璧な人選だ。
しかし莉子はオタクくんの想い人を知らないはずだ。
だから分からない。なぜ、花恋が参加しているのだろうか。
「……あの、みーくん? そんなに見つめられると、照れてしまいます」
戯言は無視する。
正直、今すぐに尋問したい。不確定要素という一点において、花恋と並び立つ者は地球上に存在しない。そう思える程に、俺は花恋の思考回路が理解できない。
(……クソがっ! 一体、どういうことなんだ!?)
絶対に何か企んでいる。
でも上等だよ。全て乗り越え、俺はこのチャンスをモノにする!
(……どうにか花恋をオタクくんに押し付けて、莉子と二人になる方法を考えよう)
* 雪城花恋 *
みーくん好き。みーくん好き。
はぁぁぁぁぁぁぁぁ、近い。近いよ~!
最近あんまり近寄る機会が無かったから嬉しいよ~!
はっ、イケませんイケません。私は清楚な淑女。例えどんなに興奮している状態であっても上品な所作を心掛けるのです。決して、みーくんの腕を摑み身体を擦り付け匂いをマーキングすることなんて考えてはダメです。
もっと建設的なことを考えましょう。
例えば……邪魔な二人の消し方、とか。
汚物は当然として……。
さっきからチラチラと見てくる眼鏡は、何者なのでしょうか。
完全に場違いです。
一人だけ学校のジャージを着ている意味も分からない。
(……とても、不愉快ですね)
消します。
具体的には、汚物に押し付けましょう。
その結果、私はみーくんと二人きりになります。
完璧です!
* 大田草彦 *
ど、どうして、こんなことに。
僕だけ完全に場違いじゃないか!?
舞浜さんも風間くんも、まるでラノベの主要人物みたいだ!
風間くんは、運動しやすいシンプルな服を着ているだけなのに、なんだか最先端のオシャレをしているみたいなオーラを感じる。
舞浜さんの私服姿は、新鮮な感じがする。普段は制服だから、ズボンを履いている今日は、特にレア度が高く思える。
そして……!
(……ど、どうして雪城さんが!?)
まさか、風間くんが!?
行動が速すぎる! 僕は、天使のような彼女を遠くから眺めるだけで十分なのに!
ああああああ、変な汗が。
どうしよう。やばい。キモイとか思われたら死ねる!
(……あぁ、やばい。緊張で腹痛が)
僕は片手でお腹を撫でる。本当にやばい。帰りたい。
でも、雪城さんと、ほんの一言でも会話できたら嬉しい……とか思ってしまう自分が居る。
(……それに)
風間くんが、僕のために今日を企画してくれたと考えたら、ちょっと嬉しい気持ちになる。ああ、やっぱり彼はすごいな。
(……よし、決めた!)
いつまでもネガティブなことを考えるのはやめる。
風間くんに少しでも近づくために、せめて、堂々としていよう!
そしたら……一瞬だけでも、雪城さんと近づくチャンスがあるかも!
* 舞浜莉子 *
あたしめっちゃいい仕事してない?
たはっ、マジ神じゃんこれ! 崇めろ☆
大田くん、ジャージとかウケるw
どんだけ運動する気なのw かわよw 好き♡
はー、やっば、めっちゃ楽しみ。
初メンばっかだし行ったこと無い場所だけど……まぁ、なんとかなるっしょ!
今日のあたしは恋のキューピット。
花恋を風間くんと合体させる。一方その頃、莉子ちゃんは大田くんとキュピ!
たはっ、完璧じゃんか!
あたしってば天才? 天才過ぎて怖いかも。
くー! 電車、早く来い!
楽しみだあああああああああああ!
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