第四話 休憩時間
「なあ、リーダー!まだやんの!?」
「まだだ。戦闘中はもっと周りを見ろーー」
二人が加わって早二日。城を一時的な拠点として使えるように整備した後、リーダーはリカルドを徹底的に叩き直すと言ってからずっと特訓三昧だった。リカルドは既に根を上げているようだが、あのリーダーの特訓に付き合える辺りかなりの強者に間違いはなかった。
「カリナ。少し手伝ってくれるかな」
「ノエル、どうしたの?」
「薬草を取りに行こうと思って。レイチェルは料理を作ってくれているから、その間に」
「分かったわ。行きましょ!」
私が暇を持て余していた所にノエルが薬草取りの誘いをくれたので、せっかくならと一緒に行くことにした。
近くの森に入ると、薬草の群生地がすぐに見つかった。しかし、そこは荒れ果てた城や市街地に比べて随分と綺麗だった。誰かが手入れをしているのだろうか。
「モニカ……」
「ノエル?何か言った?」
ノエルが何かを呟いたが、私には聞き取れなかった。慌てた様子で「何でもない」と取り繕う彼を不思議に思ったがそのまま使えそうな薬草探しに戻った。ここの主がいるのなら、あまり取り過ぎてもいけないだろうと思い最低限必要な数だけを拝借した。
「よし、これくらいにしようか」
「そうだね、そろそろご飯もできてるみたい!良い匂いがする!」
「カリナ!ノエル!おかえりなさい!ご飯できてるわよ!」
城に戻ると、食欲を唆られる匂いをまとったレイチェルが食堂の方から顔を覗かせて私達を呼んだ。食堂に入ると、美味しそうなパンと豆を煮込んだらしいスープに干し肉が用意されていた。それぞれ持ち寄った食材とはいえ、皆一週間分しか用意がなく量は一人前と呼ぶには物足りなかった。
「レイチェル〜おかわり〜!」
「そんなものないわよ!最初に食べ過ぎたのはあんたでしょ!?」
「確かに、食料は問題だな……」
腹が満たされないと駄々を捏ねるリカルドの気持ちには同感だったが、この環境で得られそうな食料には心当たりがなく今後の行軍に不安な影が差した。食後、リーダーは私達に休むよう指示すると、ノエルを連れて食堂を離れた。
「食料のことかい?」
「ああ。あの時モニカが来てくれれば百人力だと思ったが、そう上手くはいかないな」
「その、彼女のことなんだけど……」
ノエルの口から聞かされたのは、先程薬草取りに出かけた時のことだった。随分整備された群生地の側の木に彼女の名前が刻まれており、この辺りにやたら魔物が少ないことから、彼女の拠点もこの辺りにあるのではないかと推測したそうだ。
「その推測が正しければ、食料にも困らずに済むかもしれないな。明日、彼女を探してみるか」
「そうだね。カリナ達も連れて行くかい?」
「いや、余計な口を挟まれて話が拗れても困る。俺達だけで行こう」
「了解」
話をまとめると、一呼吸置いてノエルが再び口を開いた。
「ジョセフ。君はカリナのことをどう思ってるの?」
「あいつは俺が守らないといけないんだ。何かあっては祖父に首を斬られかねないからな」
そう答えると、ノエルは少し納得のいかない表情で質問を変えた。
「そういうのじゃあなくってさ、女の子として、どう思ってるの?」
「……俺とあいつでは身分が違い過ぎる。そういう関係ではないさ」
「そう、なんだ……カリナはそのことを知ってるの?」
「いや、あいつは何も知らないし知らない方がいい。知るには真実が重すぎる」
「ごめん、変なこと聞いちゃって。この話はもうしないよ」
ノエルは申し訳なさそうな顔をすると、そのまま黙り込んだ。望んだ回答ではなかったのだろうか。それとも何かーー
「もしかして、カリナのことが好きなのか?」
「君が恋愛に興味がないのはよく分かったよ……」
それも違ったらしい。今度は呆れたように苦笑いをすると、ノエルは「失礼するよ」と腰を上げて部屋を立ち去った。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます