第3話 サラ・イイジマ

 アトラスのブリーフィングルームには、多くの乗組員が集まっていた。中には、初めて見る顔もある。そして、スミスと情報部とみられる面々もいた。サラ・イイジマと名乗った彼女も、年下のように見えるが、きっと佐官なのだろう。

 作戦の詳細が、情報部と作戦司令から伝えられた。

「現在、木星開発団と連絡が取れない状況になっている。これまでに、派遣された部隊は、すべて未帰還となっている。」

ダニエル作戦司令の次に前に立ったのは、スーツを着た情報部の男であった。

「これが、交戦した際の記録です。」

SFから撮影されたものなのだろう。宇宙遊泳をする人影のような物をとらえた画像だった。しかし、その次の画像で、その場にいたものは驚くことになる。接近したそれはあまりにも大きかったのだ。宇宙では、周りに比較するものがないうえ、真空では、物の見え方も変わるため、人間ほど思っていたものはSFよりも大きい巨人だった。黒いそれは、生物の肌のような表面をしていた。巨人の横を掠めたのが、最後の画像であった。

「通信はそれで終わっている。」

その言葉が意味することは、その場にいた誰もが分かったことだろう。"撃墜"それは、これから向かう先に実戦が待ち受けているということである。ヴァニーにも、実戦の経験というものはない。任務と実戦は大きく違う。それは、横に座っている第2小隊のファンスも同じことだろう。軍に入るときに、みな覚悟をしているつもりだったし、実戦だからといって、逃げたいと思っている者もいないだろう。もっともこの宇宙空間において、逃げるところなどないだろうが。それでも、ブリーフィングルームの中には重苦しい空気が、ながれていた。

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