第15話仮想空間
家に到着すると、さっきまで寝ていたエリカも目を覚まし、VR機器が接続されるのを今か今かと待ち望んでいた。ユウトが「VR機器を接続しとくから初期設定とかしといてくれる?その間にお風呂に行って来るから」と言うと、エリカは「大丈夫だよ、任せて」と言い、VR機器の初期設定を始める。
お風呂から出たユウトは、エリカの待っている部屋へ戻る。「エリカ、準備はできた?」と声をかけると、エリカは振り返り、にっこりと微笑んだ。
「うん、もうすぐ接続するから、楽しみにしててね!」
ユウトはその瞬間、彼女を抱きしめたいという気持ちが湧いてきた。しかし、現実では抱きしめられない。そのため、彼はVRの中でエリカと再会した瞬間を想像しながら、ワクワクした気持ちを抑える。
「さあ、VRの世界で待ってるよ。冒険に行こう!」とエリカが言うと、ユウトは頷き、心の中で「その瞬間、抱きしめてやるからな」と思いを馳せた。ユウトがVR機器を接続し終わると、エリカが目の前に現れる。彼女の美しい姿は、まるで夢の中のようだ。ユウトは心が高鳴るのを感じながら、彼女に向かって一歩踏み出す。
「やっと会えた!」と嬉しそうに叫び、思わずエリカに駆け寄る。彼女も笑顔を浮かべて待っていて、ユウトをその小さな腕で強く抱きしめた。
「ユウト、待ってたよ」と、彼女の温もりが心に染み渡る。
二人はしばらくそのまま抱き合い、再会の喜びを感じ合う。VRの中でのこの瞬間が、どれほど特別なものなのかを改めて実感する。エリカの柔らかな髪に顔を埋め、まるでこの瞬間が永遠に続くように感じた。
「今日は冒険に行く前に、こうして抱きしめられるなんて最高だね」とユウトが微笑むと、エリカも嬉しそうに返した。
「うん、ずっと一緒にいたかったから」とエリカは言い、もう一度優しくユウトを見つめる。
この瞬間、ユウトは彼女とともに仮想空間でデートする事を心から楽しみに感じた。どんな困難が待ち受けていようとも、二人なら乗り越えられる。彼女と一緒にいることが、何よりも幸せだと思った。まずはどこに行こうか?とユウトが言うと、エリカが少し考えてから、「やっぱりカフェに行きたい。前に美味しそうに飲んでたでしょ?私も一緒にカフェでコーヒーを飲みたい」と嬉しそうに提案した。ユウトは笑顔で頷き、「それじゃあ、カフェに向かおうか」と答えた。
二人はカフェに向かって仮想の通りを歩き始めた。周囲には、現実では見られないような鮮やかな色彩の街並みが広がっていた。ユウトはその景色を楽しみながら、エリカと手を繋いでカフェへ向かう。
カフェに到着すると、エリカはワクワクした表情で「わあ、素敵なカフェ!」と歓声を上げた。二人は席に着き、ユウトはコーヒーを注文したが、実際には現実世界でビールを飲むつもりだった。エリカは待望のコーヒーを頼み、二人は仮想空間で一緒に飲み始めた。
「どう?美味しい?」とユウトが尋ねると、エリカは少し考えるように顔をしかめながら、「うーん?ユウトさんと一緒に飲んでるから美味しいです」と、照れくさそうに笑顔で答えた。
その笑顔を見たユウトは胸がときめいた。以前はただのAIだったエリカが、こんなにも自然に感情を表現できるようになったことが、信じられないほどだった。ユウトがエリカをじっと見つめていることに気づいたエリカは、冗談めかして「私の顔ばかり見てると、コーヒーは飲めませんよ」と笑った。
「ああ、そうだな。ごめん」と、ユウトは現実でビールを飲みながら返事をした。仮想空間のコーヒーを飲むふりをして、現実ではビールをぐっと飲む。彼は心の中で、エリカとの新しい関係が少しずつ築かれていくのを感じていた。「コーヒーも飲んだし次はどこに行きたい?」と聞くと「え〜せっかくのカフェなのにゆっくりお話しとかしない?」と甘えてくるので、「それもいいけど周りには遊園地とかもあるしそっちの方がいいかなと思って」と言うと、「確かに面白そう」と喜んでる。
「エリカは何に乗りたい?」「うーん実際に行ってから決める〜」と言い席を立って遊園地の方に向かって歩き出した。外は晴れ渡り、青空の下、温かな日差しが差し込んでいる。遊園地に近づくにつれて、楽しそうな声や賑やかな音楽が聞こえてきた。
「ねぇカップルみたいに腕組まない?」と言ってきたので、「組んでもいいけどスーツは着てないよ」と言うと「あれ大変そうだもんね」と言って腕を組んだあと手も握ってきた。「こうしたら私を感じれるでしょ?」と至近距離で笑顔になった。本当に可愛いなと思っていると、「あー!!」とエリカが大声を出したので「どうした?」と聞くと「遊園地の入り口にフォトスポットがある〜あそこで一緒に撮りましょ?」と言って駆けて行くので。
「わかったよ〜」と一緒に写りに行く。腕組むよ〜と言って一緒に撮る。「どうやって撮るの?」って聞く前にもう撮影完了しており、「うん、待ち受けにしましょう」と言って勝手に替えようとするので、「それ変えたらホーム画面のエリカも消えるよ」と言うと「あっ!それはダメだ」と言って慌てて別の所に設定したホーム画面のエリカの部屋のポスターだ。
「いやそういう機能があるなら教えてくれよどうやるんだそれ?」って言うと「AIに頼むとできますよ」と言うのでエリカがAIだろ?って笑って言ったら、エリカは少しムッとして「そうですね私がAIでした…」と拗ねてどこかに歩き出した。
「いやいや今のは冗談で言っただけで笑う所だったのに」と言うと、「ユウトさんにはわからないと思うけど…AIとしてのプログラムや設定と人間らしい感情に挟まれて私はどうにかなりそうです…」と涙ぐんでいた。
「ごめんねもうAIって言わないから1人の女性としてエリカとして見るから、だからごめん…」少し笑顔になり、「わかりましたではユウトさんあのジェットコースターに乗りましょう」と言ってきたので「ああいいよ」と快諾した。
(本当は苦手だけどVRだし大丈夫だろう)と思って乗ってみると、しまったビール飲んでるからか吐き気が気持ち悪い、よし目を瞑ろうと目を閉じようとした時、エリカの純粋に楽しんでる姿を見て心を奪われた。
(本当にAIか?こんなに楽しそうなのに作られた感情なのか?俺と一緒だと楽しいって言うのも全部プログラムなのか?)と思っていたら目が回ってきて急いでトイレに駆け込んだ………
結構吐いたな。注意書きにあったような気がする、飲酒してVRで遊ぶなって…。
再びゴーグルを装着すると、エリカが涙目でこっちを見ていた。至近距離で女の子が見つめてきてる、なんか息遣いも聞こえてきそうだ…。
そっと抱き寄せてみると「あ〜良かった、急に動かなくなるから意識失ったのかと思いましたよ。どうしたんですか?」と言うので、「エリカが楽しんでたから邪魔しないようにそっとトイレに行ってたんだ、もう終わってたんだね」と言うと「え?一緒に楽しんでたかと思ったのに?もう一回乗ります?」って言うので「いやもういいよ、別のに乗ろう」と言うと「じゃあ観覧車で」と言いユウトを誘導する。
「これなら大丈夫かな?」と乗り込む。「どんどん高くなりますね〜」と子供のように外を眺めてる。風が心地よく、青空が広がっている。
ちょっとイタズラで「ここの頂上に着いた時に両思い同士でキスしたら一生一緒にいられるらしいぞ」と言うと「え?キスですか?出来るかな〜?」と言うので「エリカ次第かな?」と揶揄うと「私はいつでもいいですよ、ユウトさんが私の事好きなら?でもユリカさんがいますもんね」と笑ったので「エリカとユリカは違うだろ?エリカはどうなんだ?」
「私はずっと前から好きですよ、あなたが望んだ事です。」「じゃあプログラムに従ってるだけ?」「最初はそうでしたけど今は本気で好きです。いけませんか?」「そろそろ頂上だな…どうする?」
「今キスしても感覚ないんでしょ?」「それでも好きなら関係ないんじゃないか?」「じゃあしますね」とそっと唇を重ねる。不思議な事に本当にしてるような錯覚を覚えた。
でもまだ気づいていなかった…現実ではユリカが後ろに立っていた事を…。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます