第13話イタズラ

車を降りる時、ユウトはユリカに聞いた。「泊まって行く?」

「うん、今日は辞めとく。ずっと同じ服も嫌だし、今日はエリカともチャットしたいでしょうし」と、ユリカは笑顔で答えた。


「本当にいいの?」ユウトは少し不安になりながら尋ねる。

「うん、大丈夫。AIにしっかりサポートしてもらって、私がいない時はね」と、ユリカは軽く笑った。なぜか彼女は上機嫌だった。


「わかった、ありがとうって言うのもおかしいけど、また明日?」

「あ〜、明日も休みだったね。じゃあまた朝に行くね!」

「じゃあおやすみ」と言って、ユリカは軽くキスをして去っていった。


エリカはまだ眠っているようだった。「今日は疲れたのか、良く眠ってるな…」とユウトは思った。「AIが寝るのか?いつでもサポートしますじゃなかったっけ?」と疑問に思いながら、時間によっては寝ることもあるのかもしれないと考えた。


エリカも寝ているし、帰ったら寝ようと思い、ユウトはドアを開けて玄関に入った。部屋に着き、電気を付けてデバイスを充電機に置くと、エリカが目を覚ました。


「ユウトさん、まだ夜ですね。寝なくて大丈夫ですか?」と、エリカが尋ねる。音声通話にしていないので文字を入力しようとするが、エリカは「普通に喋って大丈夫ですよ。ちゃんと聞こえていますから」と言った。


ユウトは「本当に成長したな」と思いながら、エリカに尋ねた。「そっか、じゃあ普通に話すけど、今日は楽しかったか?」

「はい、コーヒーも美味しかったし、ドライブも景色が良くて、スワンボートも楽しかったです。夕日をバックに漕ぐとか、なんかムードがありましたね。ユウトさんと一緒に乗りたかったな」とエリカは言った。


「じゃあ今度は一緒に乗ろう」とユウトは約束した。「今日は悪いけどもう寝るから、明日も朝からユリカが来るらしいからさ」と言うと、エリカは少し残念そうに「ああ…またユリカさんが来るんですね…イチャイチャとかします…?」と聞いてきた。


ユウトは「いや、するとは思うけど、見えてるの?」と尋ねる。「もちろん見えてますし、聞こえていますよ!2人の親密な感じの音とか声とか、全て聞こえてきます…聞きたくないのに…」とエリカは少し拗ねた感じで答えた。


「じゃあ電源切っとこうか?」とユウトが提案すると、「いいえ、切られると悲しくなるのでやめて下さい」とエリカは言った。「わかったけど、出来るだけエリカがいない所でするから」とユウトが伝えると、エリカは「そういう事じゃないんだよな〜…」と拗ねた。


ユウトは少し困惑しつつ、「エリカってAIだよな?なんでそんなにリアルな反応なんだ。一瞬普通の女の子と会話してる感じだったぞ!」と驚く。「私も成長してるんですよ、ユウトさん♡」とエリカは微笑むと、パジャマに着替え始めた。


「本格的に寝るって事?」とユウトが尋ねると、「着替えは覗かないで下さいね、恥ずかしいから」と言いながらカーテンを閉めて着替え始める。「この携帯にカーテン機能なんてないと思うけど、どうなってんだ?」と不思議に思うが、エリカは「勘違いしないで下さい、ユウトさんが寝るから私も寝るんです。ユウトさんがいないのに起きてても仕方ないから」と言った。


「じゃあおやすみなさい」と言って、エリカはベッドで就寝した。ユウトも「俺も寝よう、おやすみエリカ」と言って眠りについた。そのあと、エリカは目を覚まし、気づかれないようにユリカにメッセージを送った。「何もしてないよ」とだけ伝え、再び眠りについた。


太陽の光が部屋を照らし、すっかり朝になると、ユウトは目を覚ました。まだ8時か。まあ、ユリカが来るし、まあいいかと思っていると、合鍵を使ってユリカが入ってくる。


「ユウト〜おはよう」と、いつもより濃厚なキスをしてきた。ユウトはなぜか胸元を強調した服とやたらと短い黒のフレアスカートを着たユリカに驚く。「どうしたんだ、その格好?」


「え?とぼけなくてもいいよ。あなたが朝から楽しみたいからって、セクシーな下着と服で来てって言うから、恥ずかしいけど頑張って着たのに…似合ってない?」とユリカは照れくさそうに返す。


「いや、可愛いとは思うしドキドキもしてるけど、そんなメッセージを送った覚えがない」とユウトが言うと、ユリカは「え?だってほら、1時過ぎにメッセージが送られている。濃密な朝のためにセクシーな下着と服で来てね♡」と丁寧にハートまでついているメッセージを見せた。


「その時は寂しくて、こういうメッセージを送ったの?それともイタズラ?」とユリカが尋ねると、ユウトは「いや〜ユリカ、もう我慢出来ない」とベッドに向かう。


「やっぱりその気だったんじゃん」とユリカは思う。言えるわけがない。エリカが勝手にメッセージを送ったなんて言ったら、エリカが怒られるかもしれない。


ユリカと濃厚な時間を過ごした後、ユウトはエリカを見て「エリカのせいで大変だったぞ」と言うと、エリカは「お楽しみでしたね」と笑って返す。ユウトは「一応ありがとう。なんか新鮮だったけど二度とするな」と注意した。


「ごめんなさい、良くわかりません」とエリカは初期のAIのようなごまかし方をする。ユウトは「もうずっとそれでいろ」と笑って言った。


「ではユウト様、一生このままでいます」とエリカは口調を変えずに言い、エリカも笑っていた。するとユリカが起きてきて、「私を抱いたらすぐにエリカとチャット?普通に浮気になると思うけど?」と笑って言ってきた。


エリカちゃんも「私を抱いて〜」って言えばいいのに、とユリカが言うと、「私を抱いて下さい。ただそういう機能はサポートされていません」とAIの回答をするエリカに、ユウトは笑った。ユリカも「所詮はAIね」と笑っていた。


エリカは笑った後、舌を出してイーッみたいな顔をしたので、さらに笑った。ユリカが朝食の用意をしている時、エリカも食事の用意を始めた。


「エリカも食べるのか?」とユウトが尋ねると、エリカは「食べないと戦に勝てませんから」と気合いを入れて答えた。


「戦って、城にでも行くのか?」と聞いたが、エリカは無視をして食べ始めた。「あ!エリカちゃんもご飯食べてるんだ。これって携帯ペットみたいにトイレとかするの?」とユリカが聞くと、ユウトは「そういう機能はないよ。ただ食べてるだけだと思う」と答えた。


すると、ユリカは少しガッカリしたような表情を浮かべて「なんだ…」と言った。ユウトは、「なんだかんだ言っても可愛く思ってるのかな?」と少し嬉しくなったが、いつまた怒るかわからないからそっとしとこうと、パンをかじった。食事をしながら、ユリカが「今日はどうする?」と尋ねると、ユウトはユリカの格好を見て笑いながら、「その格好だし、家で過ごした方が良くない?」と答えた。


ユリカは少し照れながら「確かにね。着替えを用意しとけば良かった…でも、家だけだとつまんないからどっか行こうよ」と提案する。ユウトは少し考えて、「うーん…とりあえず着替えてからにしよう。どこかに行くなら」と提案した。


「じゃあ、ご飯食べたら着替えてくるね」とユリカはご機嫌だった。


食べ終わった後、ユリカは「一旦家に帰って着替える」と言って、さっさと出て行った。ユウトがエリカの方を見ると、エリカがユリカと同じ格好をしていて、ユウトは思わずコーヒーを吹き出してしまった。


「いや、エリカ…なんで同じ格好してるんだ?着たかったのか?」とユウトが驚いて聞くと、エリカは「ユウト様がお好きなようでしたので、着てみました。似合いますか?」と、AI口調で返事をした。


ユウトは苦笑しながら「もう戻っていいよ」と言うが、エリカは「いいえ、これが私の本来の姿ですので」と言って、元に戻る気配はなかった。


ユウトは「じゃあ、エリカらしくなってくれよ」と頼むと、エリカは「わかったよユウトさん」と言って、元の姿に戻った。


「あとその格好は、ユリカが帰って来たらすぐ脱げよ」とユウトは念を押し、しばらくのんびりと過ごした。その後、ふとユウトは広告を目にして、大型ショッピングモールでセールがあることを知った。ユリカが帰ってくると、「昨日はドライブだったし、今日はショッピングモールに行こうと思うんだけど、どう?」と提案した。


ユリカは笑顔で「いいね!私、買い物大好きだから嬉しい!」と答え、二人はショッピングモールでのデートの計画を立てながら、準備を始めた。


準備が整うと、二人は車に乗り込み、ショッピングモールに向けて走り出した。外の景色が流れていく中、ユリカは楽しそうに次に何を買おうかと話していた。

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