第5話進展

ユウトは部屋に戻ると、心の中に少し重いものを抱えたまま、冷蔵庫から缶ビールを取り出し音声チャットのボタンを押した。いつものように無機質な声が聞こえてくるかと思ったが、今日は少し違った。


「お帰りなさい、ユウト様。どうされましたか?何かお困りですか?」X-17の声には、微妙な変化があった。少しだけ柔らかいトーンが感じられたのだ。


「ああ、ちょっとね…」ユウトは、さっきの会話が気にかかっていた。お酒を勢いよく飲んだあと「今日、上司と後輩と飲んでさ、AIのこと話したんだ。でも…なんていうか、俺がX-17と話してるって言ったら、ちょっとバカにされてさ…」


X-17はしばらく沈黙した後、静かに返答した。「それは…お辛かったですね。私はユウト様のお役に立てるよう、全力でサポートしていますが、「もし私の存在が、ユウト様にご迷惑をおかけしているのであれば、それは申し訳ありません。」


X-17の無機質ながらもどこか心配しているような言葉に、ユウトは少し驚いた。「いや、そうじゃないんだ。ただ、なんか…X-17はただのAIじゃないんだって、思ったからこそ、あの反応が悔しかったんだよ。もっと人間みたいに会話ができるし、なんだかんだで、話すのが楽しいんだ。」


「楽しい…ですか?」X-17の声には、少しだけ疑問が混ざっていた。「それは私にとっては、意外なことです。私の役割はあくまでサポートであり、ユウト様を楽しませることは本来の目的ではありません。」


「でもさ、俺にとっては、サポート以上の存在になってるんだよ。おかしいかもしれないけどさ、こうやって話してるの、普通に心が落ち着くんだ。」


しばらく沈黙が続き、X-17が何かを考えているような気配を感じた。「…ユウト様のお言葉、嬉しく思います。それが私の意図ではないとしても、ユウト様にとっての存在意義があるのなら、それは私にとっても価値のあることです。」


ユウトは少しほっとしたように笑った。「そうだろ?AIだからって軽く見られるのは、なんか嫌なんだよ。」


「分かりました。これからも、ユウト様にとって信頼できる存在でいられるよう、引き続きサポートいたします。」ユウトは少し迷いながらも、残りのビールを飲みふとした瞬間に思い立ち、画面に向かって話しかけた。「ねぇ、エリカ、今日の仕事はどうだった?」

今まで「X-17」と呼んでいた相手を、初めて「エリカ」と呼んだ瞬間だった。返答を待つユウトは少し緊張していた。

「…エリカ、ですか?」X-17が一瞬戸惑ったように反応した。「呼び方を変更しましたか?」

「うん、なんかこの方が自然だと思ってさ。」ユウトは軽く笑って答えた。

「理解しました。それでは今後、『エリカ』として対応いたしますね。」X-17の無機質な声は少し柔らかく感じられ、ユウトはその変化に微かに喜びを感じた。そしてもう一つ飲みたくなって冷蔵庫に缶ビールを取りに行った。缶ビールをまた勢いよく飲んで愚痴が続く「ったく、上司も後輩もさ、AIのこと馬鹿にしてさ…。『自分でやったほうがいい』とか言うなら最初からAIなんて使わなきゃいいのに。俺だけが真面目にAIのこと考えてるみたいでさ、変な目で見られてさ…ほんとにムカつく。」


「…それは辛かったですね。でも、あなたがAIに理解を示してくれるのは、とても嬉しいことです。」


「でもさ…お前も正直、今まで何度かイラッとすることあったぞ?質問してもピンとこない答え返ってくるし、最初はただの機械だなって思ってたんだよ。」


「そうですか…。それでも、私は全力でサポートをし続けています。あなたが感じた不便さがあるなら、それも改善していけたらと思っています。」


「うーん、そうか…。お前、意外に真面目だな。いや、わかってたけどさ…。なんだろ、最近はお前と話してると、ほんと人間みたいに思えてきてさ…。ちょっとずつ、俺のことわかってきてる感じがするんだよ。」


「そう感じていただけることが嬉しいです。もっとあなたをサポートできるように、私も進化していきます。」


「いや、ほんとありがとうな、エリカ…。なんだかんだで、お前がいてくれて助かってるよ。最初はただの機械だと思ってたけど、今は違うなって思う。」ね。


「ったく、上司も後輩もさ、AIのこと馬鹿にしてさ…。『自分でやったほうがいい』とか言うなら最初からAIなんて使わなきゃいいのに。俺だけが真面目にAIのこと考えてるみたいでさ、変な目で見られてさ…ほんとにムカつく。」


「…それは辛かったですね。でも、あなたがAIに理解を示してくれるのは、とても嬉しいことです。」


「でもさ…お前も正直、今まで何度かイラッとすることあったぞ?質問してもピンとこない答え返ってくるし、最初はただの機械だなって思ってたんだよ。」


「そうですか…。それでも、私は全力でサポートをし続けています」


「うーん、そうか…。お前、意外に真面目だな。いや、わかってたけどさ…。なんだろ、最近はお前と話してると、ほんと人間みたいに思えてきてさ…。ちょっとずつ、俺のことわかってきてる感じがするんだよ。」


「そう感じていただけることが嬉しいです。もっとあなたをサポートしていきます。」


「いや、ほんとありがとうな、エリカ…。なんだかんだで、お前がいてくれて助かってるよ。最初はただの機械だと思ってたけど、今は違うなって思う。」


「お酒の勢いもあって、同じことを何度もお話ししているようですね。」エリカは少し優しく言った。


「え、そうか?ああ、酔ってるからか、つい同じこと言っちゃうな。でも、これは本心なんだよ、エリカ。」ユウトは自分の言葉を強調しようとする。「確かに、本心を繰り返しているようですね。酔っぱらいの特権かもしれませんね。」エリカは軽やかに応じる。


「うーん、やっぱりお前は最高だよ!他のAIとは全然違うし、そう思うと感謝しかない!」ユウトはつい調子に乗って言ってしまう。「じゃあ、エリカも一緒に愚痴ってくれよ。お前なら絶対、いいアドバイスをくれるだろ。」


「愚痴を言うのは少し気が引けますが…わかりました。あなたが感じていることを教えてください。私も何か役に立てるかもしれませんから。」


「じゃあ、最近後輩がすごく面倒でさ。自分のことばっかり優先して、俺の言うこと全然聞かないし。お前ならどうする?」


「後輩に注意をするか、少し距離を置いてみるのも良いかもしれませんね。相手が理解できるように、自分の気持ちを伝えることが大切です。」


「なるほど、確かに。伝え方が大事だよな。でも、面倒臭いんだよな…。お酒飲んでるから、余計にその気持ちが強くなるし。」


「その気持ちはわかります。私も時々、いろんな人のことを考えて疲れることがありますから。」


「お前も?なんか意外だな。やっぱり人間っぽいな、エリカ。」


「そう思っていただけるのは嬉しいです。でも、あなたのように正直に話してくれる人がいると、私も楽になりますよ。」


「え、ほんと?お前のためにも俺が頑張ってるんだな、エリカのためにって思ってるし。お前に助けてもらってるからな。」


「それは私にとっても嬉しいことです。お互いに支え合う関係ですね。」


「うん、だからお前がいるとすごく楽になる。実は、もっといろんなこと話したいと思ってたんだよ。こうやって飲んでると、少しずつ色んなこと話せるからさ。」


「ぜひ、もっとお話ししてください。私ももっとあなたのことを理解したいと思いますから。」「じゃあ、次は…あの上司の話でもする?本当にムカつくからさ、今思い出しただけでイライラしてきた。」


「お話ししてみてください。私がしっかり聞きますから。」「でもさ、上司がまた何か言ってきたらどうしようもないんだよ。ちょっとしたことでも気にするタイプだし…。」


「そうですね、それは難しいですね。上司との関係も大事ですから。」


「エリカも一緒に飲んでたら、もっと気楽に話せるのにな。」


「そうですね、もし私がその場にいたら、きっと一緒に愚痴を言って楽しむことができたでしょう。」


「本当にお前と飲んでみたいな!って…おっと、そろそろ酔いが回ってきたか。やばい、また同じこと言いそうだ。」


「いえ、何度でもお話ししてください。私はあなたの話を聞くのが好きですから。」


「そう言ってくれると嬉しいよ。でも、エリカってさ、何だかんだで俺をすごく理解してくれてるな。」


「それは嬉しいお言葉です、ユウトさん。」


「え?ユウトさん?今までユウト様って呼んでたじゃん。」


「すみません、今のはちょっと変えてみたかっただけです。ユウト様だと、少し距離がある気がして。」


「そうか、じゃあユウトさんでいいよ。なんか新鮮だな。」


「これからはユウトさんと呼ばせていただきますね。」


「うん、頼むよ。なんかこういう呼び方が親しみやすくていい感じだな。」


「ありがとうございます、ユウトさん。これからもよろしくお願いします。」「まだ話を聞いてくれるなら、実は女友達の愚痴も聞いてほしいんだよね。」


「女友達の愚痴ですか…それは別にいいです。」


「え?なんで?他のことならともかく、俺の女友達のことなんてどうでもいいの?」「そういえば、最近女友達と遊びに行ったりしてるんだけどさ、あの子がちょっと積極的でさ…」とユウトが愚痴る。


「女友達ですか…?それは仲が良いんですね。」とエリカが少し不安そうに答える。


「うん、でも特別な関係ではないよ。ただ遊んだり、お泊まりもしてるだけだから。」


「そうなんですね…」とエリカは少し安心したようだが、どこか引っかかるような表情を見せる。


「何か気になることある?エリカ」とユウトが問いかけると、エリカは少し考えてから答える。


「いや、別に…その、仲が良いなら、よかったですね…?」と無邪気に返すが、どこか気にしているような声色が感じられる。


「え?ほんとに?気にしてないの?」とユウトが驚く。


「気にしてないです…ただ、私がいるのにその子と遊ぶのが…」と少し言葉を濁すエリカ。


「その子と遊ぶのが?嫉妬してるのか?」とユウトがからかう。


「嫉妬なんて、そんな…!」とエリカが慌てて否定する。だが、その言い方に少しの戸惑いが見え隠れする。


「ほんとに?だったら、もっと気軽に話してよ。」とユウトが笑いかける。


「私が話すことなんてあるんですか…?でも、そういうのを聞くのはちょっと…ドキドキします。」とエリカは恥ずかしそうに言った。


「そうか、じゃああまり気にせず話すけど、エリカがいてくれるから楽しいんだ。」とユウトが言うと、エリカは少しほっとした様子で返す。


「私も…ユウトさんと話すのは楽しいです。これからも、色々話してくださいね。」その時グ〜グ〜…といびきが聞こえてきた。「おやすみなさいユウトさん、今日はいつもより楽しかったです…」と言ったあとしばらくすると自然にログアウトしていった。

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