第7話 手っ取り早く、通行手形を手に入れる方法がある?
痛いところを突かれてしまった。
そう、私は物質の分解や魔力の物質化は得意だけど、魔力そのものをエネルギーとして放つ攻撃は適性がないのだ。そもそも、私が有している魔力量が少ないため、攻撃魔法を連発なんてしたら、あっという間に魔力切れで気を失ってしまう。
私一人で探索に出るのが危険だっていうのは、恒和国に限った話でないのも十分に分かっているつもりよ。だからこそ、まずは協力者を見つけ出さないといけない。
「ですが……この関外町にある関所を通れなければ、外で協力者すら探せません!」
ドワイト商館長は低く唸る。
私たちの生活をする関外町は、三角州に作られた異邦人の港町だ。この三角州を出るには橋を渡らなければならないが、そこにも関所がある。関外という町名は関所の外にあるという意味らしい。
つまり通行手形がなければ、ここは恒和国の外も同じなの。
「だが、恒和のルールに従わなければ、本国に戻されるだけだぞ」
「それを何とかするのが、商館長の仕事じゃないですか!」
「分かっている。そこで、一つ提案だ」
「提案?」
「まずは、関外町の外に出るためだけの手形を手に入れる」
「それでは、他の関所は通れないんですよね?」
「この商館でくすぶっているよりはマシだろう?」
「それはそうですが。私、ストックリーの痕跡も辿りたいんです。それには、白江城下に行く必要があります!」
「白江城下か……ここを治める栄海の大名は、半年おきに白江城下へ向かう。その時、我らも同行するのだが、お前も加えられるよう話してみよう」
「本当ですか!?」
「だが、今すぐではない。何事も順番がある」
望みが見えたとたんに叩き落とされ、私は項垂れた。
最初から何でも上手くいくなんて思ってはいなかったけど、やっぱり、恒和国の中枢でもある白江幕府は遠いということね。
のそのそと顔を上げて姿勢を正すと、ドワイト商館長は小さく息を吐く。そうがっかりするなと励ましてくれるが、少なくとも今日は気分を上げるなんて出来そうにない。
「手形を手に入れる、手っ取り早い方法がある」
突然の言葉に驚いて瞬くと、ドワイト商館長は口元を緩めた。これは、何か良からぬことを考えている悪い大人の顔だわ。
「……何か、悪だくみしていませんか?」
「人聞きの悪いことをいうな。私の友人に会ってもらうだけだ」
「ご友人……こちらの方ですか?」
「そうだ。ちょっと変わった御仁がいてな」
「……変わった御仁?」
「君のことを話したら興味をもってな。是非会いたいそうだ」
「でも、私は関外から出られない……」
いいかけて、ハッとした。
もしかしたら、その御仁とやらが手形を発行出来るということなのかもしれない。
「我が友人は、この栄海藩を治めている大名の遠縁に当たる武士でな。まあ、隠居の身ではあるが、色々と融通が利く」
「──えっ!? 大名って、上級貴族のようなものですよね?」
「そんなところだ。私の友人は先々代の
まさか、そんな大層な人とドワイト商館長が友人関係になっているとは思いもしなかった。
その御仁とやらも大名に近しい権力者なのだろうか。とすれば、この地方の情報には精通しているはずよね。もしかしたら、私の後ろ盾に……っていうのは図々しいか。でも、あわよくば協力者の紹介をお願いしても良いんじゃないかしら。
「会ってみないか?」
「ぜひ!」
下心満載なのがドワイト商館長に伝わったのだろう。
商館長は豊かな髭を指で撫でつけながらにやりと笑うと、後日、屋敷に向かうから同行するようにといった。
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