第三話 十一人の生徒たち
異常な程にゆっくりと進む時間の中、皇が入ってきた扉は開いた。見た所、入ってきたのは新入生の男だ。
「あれ、一番乗りかと思ってたのに」
残念そうに男が肩を下ろすと、一番近くの席にいた皇の隣に勢いよく座る。
「そっちにいるコも来いよ!これから三年も付き合いあるんだし」
ニコニコしながら男が手を振ると、藤原はあからさまに嫌な顔をした。
「この学校は一学年に百人も居るのよ。貴方と三年間過ごすかどうかなんて分からないじゃない」
彼女が冷たくあしらうと、男はきょとんとしてしばらく黙っていた。皇は重い空気感に押しつぶされそうになる。
「あんた、知らないのか?今回の入試、学園長と生徒会長のお目にかなう人がなかなか居なくてたったの十人しか入らなかったんだぜ?」
男の言ったことに驚いたのか、彼女は目を大きく見開いてこっちを振り向いた。どうやら彼女はその情報を知らなかったらしい。
「どういうこと?今までどんなに少なくても五十人は居たじゃない」
男は彼女の食い付きっぷりに満更でもなさそうな表情を浮かべると、自慢げに話し始めた。
「最近結成された『ウィアード殲滅隊』は知ってるよな?その構成人数は十一人。その十一人をこの学園で育て上げようって腹さ」
ウィアード殲滅隊とはウィアード討伐隊の十一の隊から選りすぐりの人材を一人ずつ選んで構成された組織だ。
そのウィアード殲滅隊に選ばれる人材を徹底的に育て上げる為に、寮生にし、加えて最大入学人数を十一人にしたのだ。
「そうだったの……、寮生になったのは知っていたけど、まさかそんな理由だったなんて」
彼女が俯きながら何かをブツブツと唱えていた。男は皇の手を引いて自分から藤原の隣へと腰掛けると、自己紹介を始めた。
「俺の名前は七楽蓮。好きなものは犬で嫌いな事は寝ること!よろしくな」
「……私は藤原丞春。好きな事は観察。嫌いなことは……働くこと?」
真面目そうな彼女の口から、小学生なような言葉が出てきて皇は驚いたが、どこか親しみを覚えた様だ。
「俺は皇竟。好きな事はアニメとか小説で、嫌いな物は虫。よろしく」
七楽が満足そうな笑みを浮かべる。藤原はしばらく七楽を見つめると、ある質問を投げかけた。
「ところで貴方……さっき十人しか居ないって言ったわよね?じゃあ、後の殲滅隊一人はどうするの?」
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