第15話 からだのしくみ
犯罪者予備軍に背中で別れを告げたわたしは、中庭のベンチで炭酸水(マンゴー味)を飲みつつ、スマートフォンで二推しの女性アイドルのブログをチェックしていた。
この時間帯は部活動で辺りにひとけがないから、校則違反でも遠慮なくスマホが使える。
だけど、このまま過ごすのもアレだし、もうお
「なーにサボってんだよ、おまえは!」
鼻血が出たのを確認しながら、四つん這いで振り返る。
ベンチを隔てた芝生に立っていたのは、鬼の形相をした毒島部長だった。
毒島部長は、ミドルキックを放った右足を時間をかけてゆっくりと戻し、今度は腕を組んでわたしを睨んだ。
「……す、すんません」
鋭い目つきが、わたしの脳内を恐怖に染める。起き上がって逃げようとする生存本能すらも支配した。
そんなわたしの頭を、いつの間にか近くまで来ていた毒島部長が容赦なく踏みつける。
「死にたいのか、あ? 死にたいんですか、あ・な・た・は?」
後頭部を踏みつけ続ける毒島部長。
黙っていればメッチャ可愛い容姿とは裏腹に、やる事なす事が鬼畜過ぎて涙も枯れ果てる。
「すんません……マジすんません……調子に乗ってました……ガチですんません……」
毒島部長はなんの返事もしない代わりに、必死に命乞いをするわたしの髪の毛を鷲掴みにして無理矢理に立たせた。
「火野さん」
ほんの数センチ先まで近づけられた美少女の顔が、キュン死にしそうなくらいの愛らしい笑顔に一瞬で変わる。
と、
「謝るんなら、最初からやるんじゃねぇぇぇよぉぉぉッッッ!」
美少女らしからぬ本気の頭突き攻撃をお見舞いされた。
そして、次の瞬間──
大爆発。
足もとの世界では、学校の校舎に囲まれた中庭のような広場が黒煙に包まれて燃えている。
あれは……なに?
ここはどこなの?
不思議な浮遊感に包まれながら、わたしは夢心地で考えてみた。
けれども、答えは出てこない。
『比乃子さん』
自分の名前が呼ばれる。
声の方を見ると、蛇のような骨のような銀製の仮面をすっぽりと被った人物が、全身から強い光りを放ち浮かんでいた。
『比乃子さんの身体は、肉体的ダメージが極限にまで達すると、大爆発を起こす仕組みになっています』
大爆発?
仕組みってなによ?
フワフワとした感覚のまま、異形の仮面の人物の話を聞く。
『でも、安心してください。すぐにキミの肉体は再生するので、綺麗無傷な状態に戻りますから。なぜならキミは、〝不死身の改造人間〟なのです』
次から次へと、なんの事だかわからない情報が耳に入っては抜けていく。
今はただ、この浮遊感がとても心地よい。
徐々にまばゆい光が視界に広がっていき、真っ白いだけの空間へと変わる直前、異形の仮面の人物が最後にこう言い残した。
『娘を頼みましたよ』と。
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