第14話 クレイジークレイジー
破壊倶楽部は、運動部の屋外部室と同じ並びにある。
つまり、うちの部は文化部じゃない。
活動内容や部長があんなんだから、当然といえば当然なんだけどね。
(むむっ……本当に出そうになってきたし)
この辺りのトイレといえば、校舎の中かすぐ近くの駐車場側にあるんだけど、そっちは臭いから絶対に使いたくない。
校舎へ行くついでに、自販機でなにか飲み物を買おうかなと考えながら歩き始めると、右隣の部室のドアが静かに
「あれ? フェノッチじゃん!」
顔面が包帯グルグル巻きの、頭部が白い塊状態の男子生徒なんて、わが校に限らず世界中を探してもたった一人だけしかいない。
ついこのあいだ毒島部長に半殺しにされたフェノメノン小太郎・ロドリゲスが、ランニングシャツに短パン姿で陸上部の部室から出てきたところだった。
「…………」
多分、包帯グルグル巻きでよく聞こえてはいないのだろう。
ずっと無言のまま、こちらをじっと見て(?)いる。この生き物、めっちゃキモいな。
「ねえ、フェノッチってさ、部活を掛け持ちしてるの? ここって陸上部じゃん」
「…………」
「えーっと、今日は女の子ちゃんの日だから、陸上部なんだ?」
「…………」
「なんか機嫌が悪くなってきたから、おまえに腹パンチしていい?」
「よろしくお願いします」
「聞こえてんじゃねぇかよッ!」
瞬間湯沸し器並みに一瞬にしてぶちギレたわたしは、野郎のお望みどおり
わたしに寄り掛かるようにして前のめりに崩れるフェノッチが、倒れ際にかすれるような小声で「ありがとうございます」とだけつぶやいた。
★
本校舎一階の女子トイレから出たわたしは、そのまま戻らずに中庭へと向かう。クレイジーな
中庭に面した通路に設置されている自販機で果実フレーバーの炭酸水(マンゴー味)を買って飲みながら歩いていると、不意に名前を呼ばれた。
振り返れば、同じクラスの
猿渡君はわたしの顎くらいの背丈で、しかも童顔だから、中学生どころか小学五、六年生にすら見える。斜め掛けのゼッケンバッグがやけに大きく感じてしまい、よりいっそう彼が幼く見えた。
「火野さん、部活はどうしたの? 破壊倶楽部の部室ってたしか、運動部のところだよね?」
「猿渡君こそ部活は? 美術部でしょ?」
お互いに質問をぶつけ合うかたちになり、思わず一緒になって笑う。
「ハハッ、実は先生から盗撮と盗聴の件で呼び出しがあって、今から向かうところだったんだ……ププッ、アハハハ!」
「ウフフ、そうなんだぁー………………って、笑えねぇよ! そんな事情じゃ全然笑えないから! どこのだよ!? どこに仕掛けたかによっては、もう二度と〝君付け〟で呼ばねぇーからな!」
ここにもまた、クレイジーな
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