放課後エクスプロージョン
第10話 美少女に誘われて
下校時刻──一年生の教室がある本校舎の昇降口が騒がしい。
なぜなら、新入生を勧誘しようと、大勢の各部部員たち(明らかな営業スマイル)が競技用のユニフォームやパーティー用グッズを身につけて、自分たちの部に入らないかと必死にビラを配ったりして熱心に誘いをかけていたからだ。
「よろしくお願いします!」
「あっ……はい」
授業が終われば、まっすぐ家に帰りたい。部活動に興味はないけれど、先輩や新入生のなかに美少女の一人や二人、三十人くらいはいないかと思って偵察に来ていたわたしは、襟足でまとめられた二つ結びがよく似合ってる、愛らしい笑顔の美少女から差し出されたチラシを、つい欲望に負けてスケベ心で受け取ってしまった。
ええ、そうです。わたくし、可愛いものと美味しいものが大好きですけれど、それがなにか?
「えーっと、なになに……」
そのチラシには達筆な書体で、〝たぎらせろエナジー! 今日からキミも破壊倶楽部だ!〟と書かれてあった。
「……破壊倶楽部?」
思わずその場でチラシに見入り、立ち止まってしまったわたしに彼女は「破壊行為、お好きなんですか?」と、先ほどよりも
「いえ、あの……破壊倶楽部って、なにかなぁーって」
そんな何気ない言葉でスイッチが入ったのか、二つ結びの美少女は、輝く笑顔を真顔へと急変させた。
「主な活動内容は、破壊行為全般になります。もちろん犯罪とかじゃなくて、茹で卵の殻を剥いたりですとか、美術部の作品の失敗作を叩き割ったり、破いたり、燃やしたり、東京湾に沈めたりといった行程をその都度的確に選択し──」
彼女はその後も、ペラペラと止まることなく機械的に熱弁をふるった。
要するに、破壊倶楽部の活動内容は、モノをひたすら壊すだけの、いろいろと危険な奴らの集まりみたいだ。
「あ。やっぱり、生理的に無理っス」
チラシを笑顔で突き返す。
それを受け取った美少女のつぶらな瞳が、みるみるうちに涙で潤む。
あれっ、なにこの空気。
当然の権利で拒絶しただけなのに、わたしが悪者みたいになってるんですけどぉ!?
美少女の紅潮した頬には、宝石のようにきらめく涙が次々とつたい落ちてゆく。
「あ。やっぱり、興味津々っス!」
チラシを笑顔で奪い取る。
涙目の美少女が笑顔に戻った。
こうしてなぜかわたしは、そのまま破壊倶楽部に入部することになった。
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