『旧校舎のあの子』

あの頃の僕は旧校舎通ってたんです。

いえ、友達がいなかったわけじゃないんですよ。

でも中休みの時間、いつも旧校舎に行ってました。

そこで待ってるあの子に、毎回本を読み聞かせてあげてたんです。



吾輩は猫であるとか、檸檬を読み聞かせたりしました。

ただね、その子すっごく偏屈で、

「ここはもっとこうなんじゃない?」とか、文句言うんです。

でも唯一、文句を言わなかったのが



「人間失格」の冒頭です。「恥の多い生涯を送って来ました」ってやつ。

こればっかりはどう読んでも満足げに、にやにや笑うんです。

まぁ思えば読み聞かせる本じゃないんですけど、

やたらとそのセリフをせがまれました。


だからなんでしょうか。今も時々、旧校舎に通ってそのセリフを呟くんです。

あの子の笑顔が見たくて。

今も変わらない姿でいまも、目の前に、


そこに



理論上最速暗裏/オケツ・カユイⅠ世/花豆/どす子い


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