2話 豪邸
「着いたよ、ここが私の家」
「な、なんじゃこれ…」
そこにはとてもとても大きい白い家があった、豪邸と言った方が正しいだろう。街を歩いていて思ったがここら辺は元いた世界でいう西洋な感じがしていたが、ここまでとは。その子が門をあけておれもついていく。
「す、すげぇなんだこれ」
周りには大きな花壇に、噴水に。物語とかでしか出ないような門を超えた先には別世界が広がってるように見えた。玄関に近づくと扉が勝手に開いた。そこから誰か出てきた。
「おかえりなさい、って」
メイド服を着たその人は俺の方に目を向け睨んできた。少々、というか目つきが普通の人とは思えないんですけど。
「クラミル様、この人はどちら様で」
「この人はさっき路地裏で倒れてて、パンをあげて家までついてきた」
この子クラミルっていうのか。それよりちょっとまってくれ、その言い方はよくない誤解が生まれそうなんですが。
「なるほど…」
もうメイドさんの目つきはおれを殺す目になってる。
「あの、ちがくて、その」
弁解しようとしても、何言ってもダメな方向に向かいそうで何も言えずにいると、突然彼女が口を開く。
「スリス、客人が来たからって慣れない様付けなんてしなくてもいいよ」
「ちょ、ちょっとそういうこと言わないでください」
ん、この会話から察するに、もしかして2人は主とメイドというより友人的な感じなのか。
「それよりこの人怪我してるから、処置しないといけないから私の部屋連れてくよ」
「か、かしこまりました」
俺は彼女に手を引っ張られて連れて行かれる。ところどころに花がおいてあったり家の内装が想定してる感じの豪邸といった感じで見ながらあるいているが行き先は部屋と言っていたな…部屋?扉を開けた先は
「よし、とりあえずここ座ってね」
女子の部屋であった。べつに女子の部屋が初めてとかではないのだが、場所が場所だからか少し緊張する。
「えーっと、どこにおいてたかな…」
やることのないおれは少し周りを見渡していた。しかしまあ、広い。床はホテルとかの廊下の感じの地面で、整えられた大きな白ベット、あたりは散らかってないしで想定していた以上のブルジョワ感に呆気にとられていると。
「そんなに気になる?」
「うお!」
気づけば目の前にいた。
「くちがぽかーんってなってたよ」
彼女は少し笑いながらおれの顎に消毒してくれた。
「っつー!」
「はい、我慢してねー」
処置はすぐ終わった。彼女は道具を戻して俺と向かい合って俺に聞いてきた。
「そういえば聞いてなかったけど君は何歳なの?見た感じだと私と同じぐらいだと思うけど」
それを聞かれておれは少し考えた。そういえば、自分の顔を見たのは目覚めた時だったが思えば結構若返っていた気がする。当然顔は全く違うが。それよりなんで答えればいいんだ、40後半ですなんて言えるわけないし。私と同じぐらいと言っていたし、聞いてみるか。
「な、何歳なんですか?」
「質問の答えになってないよ〜、ちなみに私は15だよ。で、君は?」
え、もしかして中学生、高校生?なのか。いや、ひとまず返さねば。
「き、奇遇ですね。お、おれも15なんですよ…」
言ったはいいがどうだ。大丈夫だよな。
「やっぱり!わたしすご、ぴったり」
「ふぅ」
ひとまず危機は脱したのか?
「……」
なぜか彼女は急に下を向いて黙りだした。
「まあ、あまり深くは聞かないよ。君が良ければ今日泊まってもいいし」
「え、いやそんな厄介になるわけには…」
「いいよそんな遠慮しなくても。今日パパとママ帰ってくるの?」
そう言うと後ろのドアが開いて、さっきのメイドが立っていた。
「いえ、明日あたりに帰ってくると思われます。それよりクラミル様、そんな気安く泊めていいのですか」
メイドさんのいうことはもっともだ。むしろ急に来たひとに泊まっていくか聞く彼女が異質なだけかもしれない。
「いいの?というより大丈夫なの?」
彼女はすごく心配そうな目で俺を見てくる。もしかして、おれのことすごく気遣ってくれているのか?だとしてもな…。その時メイドの人が口を開いた。
「…まあ、お風呂ぐらいならいいんじゃないですか」
「そうだね、少しお風呂でゆっくりして考えてみて」
「あ、ありがとうございます」
おれは頭を下げ彼女に礼をした後、メイドの人に付いて行く。その途中でおれはメイドさんに声をかけた。
「あ、あの」
「勘違いしないでくださいね、私は哀れみを感じて言ったのではなく、クラミル様の厚意が無駄になってしまうと思って助け舟をだしたまでです」
お風呂につくとメイドさんはタオルを持ってくるから入っていてください、と言い行ってしまった。脱衣所は横に広く長い板が3本壁にあって、そこに服を置いたりするすごくオシャレな感じのやつで、洗面所が白くて綺麗だ。俺の家の脱衣所の洗濯かごみたいな入れ物とは大違いだな。そう思いながら服を脱ぎ鏡を見ると。
「ほんとに15歳、中学高校ぐらいになったんだなおれ。それに…小さくなってる」
脱衣所のドアを開けた俺は思わず声が漏れてしまった。
「…え、すご」
俺の家の1人でも狭いと感じる風呂とは全く違う世界が広がっていた。リビングの部屋並みの広さの風呂場には、入ると左に2人分のシャワーヘッドに、そこ以外を大きな浴槽が占めている。閃緑岩や花崗岩のような床は掃除が行き届いていてすごく清潔味を感じる。
「凄すぎて萎縮しちゃうぜ…」
ひとまず体を洗い終わった俺は、お風呂に浸かる。
「あぁ〜〜、温度がちょうどよすぎる」
「タオル扉にかけておきますよ」
「あ、ありがとうございます」
メイドの人が持ってきてくれたようだ。何から何までしてもらってばっかりで頭が上がらない。
俺は少し自分のことについて考えを巡らしてみた。まず初めに、俺は本当に転生したのかということ。顔に体まで全く変わってるしこれは本当なのだろう。正直いまだに信じられなくて夢なのではないかと思い続けている。
それに彼女、クラミルのこと。こんな誰かもわからない俺に食べ物をくれて、それだけじゃなく家で傷の処置までしてくれて…ここまで優しくしてくれる理由もわからないし。もしかしたらそこまで深く考えてない?その可能性が高そうだな…。
それに俺自身が俺のことをわかっていないということだ。目覚めた場所はあの変な場所だったし、おれは帰る家がもしかしてないのか…だとしたらおれはここに泊めてもらったほうがいいのかも、行く宛もないし。
となれば、彼女の言葉に甘えさせてもらおう。すこし泊めてもらっているあいだに自分の家やら探さないといけないな。やることは多くなりそうだ。ある程度方針も心の整理もすこしついたところで湯からあがり、体を拭いて脱衣所の鏡を見たおれはこう思う。
「おれ、少しイケメンになってるのでは」
廊下に出た俺は部屋から出てきた彼女に声をかけられた。彼女はバスタオルのようなものをもって出てきた。
「そいえば部屋なんだけど、ついてきて」
俺は彼女の一歩後ろを歩く。そしてある部屋の前に来た彼女は言う。
「ここで寝てね」
「あ、ありがとうございます。ほんとに寝床にこの服も」
「そんなにかしこまらなくてもいいのに…」
どうしても申し訳なさが勝ってしまう俺は、彼女に聞いてみる。
「あの、何か俺にできることとかありますか。少しでも恩返し…じゃないですけど、なんかしないと気がすまなくて」
「う〜ん、あ!じゃあさ明日昼の買い物に付き合ってよ」
「そんなのでいいんですか、もっと家事の手伝いとか…」
「いいの、じゃあ明日よろしくね!」
そういうと彼女はお風呂の方に向かっていった。後ろ姿がすごく楽しそうに見えるのは気のせいだろうか。
「と、とりあえず寝るか…」
扉を閉めたおれはベットに飛び込んで目を閉じた。
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