第2話 初めての戦い

 屋上から飛び降りる覚悟でデーヴァベインに乗り込みコクピットでの操縦を試みた。とにかく学校から離れたかったから動かそうとしたが――。

 空を飛べる装備はないと思い仕方なく走って移動しようとした。なんだか分からないけどデーヴァベインは手慣れた様子で操縦出来ていた。

 外の視界が映る真ん中のモニターの下にある丸いモニターはきっとレーダーだろう。まだなにも映っていない。良かった。これなら余裕をもって離れることが出来る。学校を護りつつ戦うなんて無理だろうし今の内に出来るだけ離れておかないと――。


「キョーヤ! 総司令官からの通信がくる! 良く聴いて!」


 デーヴァベインと言い総司令官と言いこの世界は本当にどうなっているんだ。これじゃまるでSFの世界じゃないか、まさか俺達の世界がこんなことになるなんて。

 外の視界が映る真ん中のモニターの上に四角いモニターが三面鏡のように並んでいた。きっとここに総司令官が映るのだろう。そろそろくる頃と感じ俺はデーヴァベインを立ち止まらせた。

 すると急に三面鏡の真ん中に誰かが映り始めた。この女性が総司令官なのだろうか。軍服と軍帽ぐんぼう以外は分からないがここは静観する場面だろう。


「初めましてと言いたいところだけど今はそうも行かない、まもなく敵機がリンクしてくるでしょうから」


 リンクってのが分からない。それになんだか嫌な胸騒ぎがする。こんな俺でも生きているって実感出来るときがくるなんて思いもしなかった。デーヴァベインがあるってことは敵も機体なのだろうか。分からない。


「お母さん! キョーヤ! 機影が三! くる!」


 ついにきたか。レーダーに機影を確認。凄まじい勢いで直進してきている。この速さは同じ機体とは思えない。まさか空を飛んでいるのか。


「遼、お母さんはやめなさい。とにかく頼んだわよ、キョーヤ君」


 ふと二人が似ているか興味を持ったが改めて見比べる余裕はない。気付いたときには綾見 遼の母親は消えモニターは黒くなったいた。ってそれよりも武器がないと戦えない。なにか使えそうな武器はないのか。


「右のパイルバンカーライフルを使って! キョーヤ!」


 訊いてもいないのに勘が良いな。


「これか!?」


 動きを止めたままで狙撃する訳もなく俺は無駄にその場にとどまりデーヴァベインのパイルバンカーライフルで撃つ構えをした。相手は直進してくる訳だから遊び半分の狙いすました気持ちでいた。


「三、二、一、今! 撃って!」


 が急な指示に市街地で撃つことが怖くなった。場所を選べないのか。そんなことを考え俺は撃てなかった。もし外れたら死人が出ると感じ取り萎縮してしまった。直進してきた一番機は俺とは違い狙いを定めたかのように減速しデーヴァベインに真ッ正面を向いた。


「ならせめて左のディフューザーシールドを構えて!」


 シールド? 防御か。それなら行けると感じ取りデーヴァベインのディフューザーシールドで防御姿勢を取った。


「三、二、一、くる!」


 一番機が撃ってきた、それも綾見 遼の合図と重なるように。四発のミサイルが直進してくる。このときの俺は避けるが頭になくただ防御するので必死だった。それ故にコクピットを護ろうと無意識の内に一段上の強固な防御姿勢を取った。

 頭部を護る発想には至らずひたすらに胴体の前にシールドを置いていた。一番機はそこを狙ってきたのか今度はビームを撃ってきた。


「しまった!? 頭が!?」


 気付いたときには遅く声を荒げただけの俺は一番機どころか二番機以降にも無防備をさらしていた。これでは今にもやられる。どうすれば――。


「飛べ! デーヴァベイン!」


 綾見 遼が言った瞬間にデーヴァベインが宙に浮いた。丁度良く浮き上がったのか四発のミサイルはシールドに当たり爆散し煙が立ち込めた。最後のビームはデーヴァベインの頭部が破壊されていないところ見るとこれもシールドに当たったのだろう。

 一番機の攻撃をなんとか防ぎデーヴァベインの横を通り過ぎていった。今度は二番機と三番機を相手しなければいけないのか。


「キョーヤ! 撃てないなら右のパイルバンカーブレードを使って!」


 射撃が無理なら近接か。今なら空も飛べるはずだし行ける気がしてきた。これなら戦える。今度こそやって見せる。行け、デーヴァベイン。

 こうして俺は一番機との初めての戦いをなんとか防ぎ次にくる二番機と三番機に立ち向かうべく空を飛びながらデーヴァベインを前進させた。

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G線上のデーヴァベイン 結城辰也 @kumagorou1gou

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