記憶
愛美
記憶
貴方の低い声、私にしか見せない表情、細くて長い指、時々垣間見える子供っぽい一面、全てがまだ私を縛り付ける。
違う、違うと言い聞かせて、常に冷たい貴方がかけてくれる優しい言葉に、期待してしまった。元恋人という複雑な関係にも関わらず、また貴方のあの暖かさが恋しくなって、貴方じゃない誰かに寄り道して、開いた穴を偽りの愛で埋める。スマホの画面を開いては、来るはずのない貴方からの通知を確認して、勝手に落ち込む繰り返し。
記憶の中の貴方を、一目見ては正気を取り戻す。どうにか捕まえておきたくて、記憶の中だけでもと、隣に縛り付ける。そこにいる貴方は、暖かかった頃の貴方で、現実との差が、逆に私を記憶の中に縛り付ける。貴方に縛り付けてほしくて、記憶の中で。
記憶 愛美 @hubuki0610
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