祖父からもらった絵本たち 【再掲】

猫山鈴助

かいじゅうの王子さま

私の祖父の仕事は世界中を渡り歩き、その国々の童話を絵本にすることでした。


これは祖父にもらった絵本の中の一つのおはなし。


タイトルは「かいじゅうの王子さま」


✧北の国には、少年とその両親がすんでいました。少年の名前は「ノア」


生き物がだいすきな、心やさしい子でした。ある日、ノアはおとうさんに「かいじゅうの国」のことを教えてもらいました。


かいじゅうのくにには、わるいかいじゅうが住んでいましたが、大昔にゆうしゃに怒られ、やさしいかいじゅうになったそうです。もしもあなたが、わるいことをしても、その後のおこないで罪はゆるされるのです。


ノアは、おとうさんに聞いたお話をすてきだと思いました。そして、かいじゅうの国に行ってみたいと思うようになりました。


ノアは次の日、両親の目をぬすみ、馬車で、かいじゅうの国に行きました。かいじゅうの国に住んでいるかいじゅうたちは、見た目こそ違いましたが、みんなニコニコしていて、とても幸せそうでした。


ノアはそこである男の子となかよしになりました。かいじゅうの名前は「ガブリエル」おおぞらみたいにきれいな水色のかいじゅうでした。


ガブリエルとノアは、いっしょにパンを食べたり、ボールであそんだりしました。帰る時間になりノアは馬車に乗って帰りました。


それから少し経ったある日、となりの国との戦争で貧しくなった北の国は、かいじゅうの国を襲いました。


かいじゅうの国は、ゆうしゃとの約束をまもり、人をおそいませんでした。でも、人はかいじゅうをおそい、家をやき、城をぼろぼろにしました。


ノアはその日の夜にそれを知り、その日のうちに馬車に乗りました。


ほしがきれいなよるでした。


ノアが探したのは、ガブリエルのことでした。他のかいじゅうに聞いて知りましたが、ガブリエルはかいじゅうの国の王子さまだったのです。


ぼろぼろのお城には、血まみれの王さまと、その近くで泣いているガブリエルの姿がありました。


ノアは、わるいことをしたら、そのつみは何をしてもきえないと、思い知りました。


王さまは、「ガブリエルをまもってあげて」と、ノアに言いました。ガブリエルのきれいなそらいろの肌は、土埃と王さまの血で、よごれてしまっていました。でも、そんなガブリエルのすがたはとてもきれいで、ノアはすこし、どきどきしていました。


まもなくして、王さまは亡くなりました。ガブリエルは大きなこえで泣きました。ノアはガブリエルを抱きしめて、そらを見ました。


きれいなほしぞらは、にじんでしまってよく見えませんでした。


ガブリエルも、ノアをつよく抱きしめました。


かいじゅうの王子さまであるガブリエルはこの先、人間からひどい扱いを受けることになるかもしれません。


でも、ノアはガブリエルを何があってもまもることを心にきめました。


星は、ちからづよく金色にかがやいています。


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

祖父からもらった絵本たち 【再掲】 猫山鈴助 @nkym5656szsk

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る