生け花

 好きな人を好きだと思えている時が一番幸せだ。汚いあなたに気づくまでの、つかの間の幸せなのかもしれない。


 しかし、花瓶に生けたばかりの花を、「いつか枯れてしまうんだろうか」なんて憂いながら愛でるのが、何よりも幸せで尊い時間なのだ。


 それが造花じゃない限り、いつか花は朽ちる。だからこそ愛おしいのだ。


 私を仄かな憂いと愛情に狂わせるあの蒼い花も、いつか枯れてしまうのだろうか。


 もし叶うのなら、私の窓辺でそよ風に揺れる赤い菊のように…せめてしばらくの間は枯れずに、ずっと愛し合えればいいなと思う。

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あなたを転ばせる空き缶の詩集  猫山鈴助 @nkym5656szsk

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