生け花

 好きな人を好きだと思えている時が一番幸せだ。汚いあなたに気づくまでの、つかの間の幸せなのかもしれない。


 しかし、花瓶に生けたばかりの花を、「いつか枯れてしまうんだろうか」なんて憂いながら愛でるのが、何よりも幸せで尊い時間なのだ。


 それが造花じゃない限り、いつか花は朽ちる。だからこそ愛おしいのだ。


 私を仄かな憂いと愛情に狂わせるあの蒼い花も、いつか枯れてしまうのだろうか。


 もし叶うのなら、私の窓辺でそよ風に揺れる赤い菊のように…せめてしばらくの間は枯れずに、ずっと愛し合えればいいなと思う。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る