第13話

俺にそう告げる親父の声が部屋に響き、一緒に待機している連中に緊張が走ったのが伝わってくる。



俺と親父は動揺することなく、沈黙を置く。





……時が来た、ただそれだけだった。






「覚悟ならもう出来てる」


「…フン、なら良い。安心した」


「……」


「悪い相手ではないはずだ。

……きっとお前も気に入ることだろう」






そう言って口角を上げる親父。


この言葉に皮肉が込められていると気付かない程、俺も子供ではない。





───俺が相手を愛すことなどないと知っていて。





その上でわざと俺を煽る。そしてその後に馬鹿にしたように嘲笑うのだ。






「なんせ“思わぬ逸材”を見つけてきたからな」






───期待しておけ。




そう言う親父を横目で見ながら、実の父親と言えど無慈悲な男だと思う。



家の利益になる女しか連れてこない癖に、そうやって心にも思っていないことを平気で口にする。





……この血を受け継いでいるのかと思うと、反吐が出る。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る