第20話

「っ、ゃ……」


「はは、嫌だ?そうだよねぇ。

……じゃあもう二度とあんなことしちゃ駄目だよ?」





悪いことをした子供に言い聞かせるような、不気味で甘ったるい声が脳に響いて、洗脳される。



全て、初めから間違えていたのだ。


光流と日下のどちらが悪者なのかなんて

どちらが私の味方なのかなんて


そんな馬鹿な事を考えていたのが間違いだった。




私は彼の言葉に従うようにして力なくコクンッと首を縦に振る。


そうすることしか出来ない。





「じゃあ、また後でたっぷり愛してあげるから、今はお利口にしててね?」






此処に善人なんて存在しない─────。


生まれた瞬間から、こうなる運命だったのだと。

私は悪魔に魅入られた、生贄なのだと。



そう思えたら、どんなに楽だろうか。




……私が彼等を悪魔に変えたのだ。

他でもない、私が。



私が、非力だから。

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