第7話

「っ、由奈……?」




気付けば、背に庇うようにして光流の前に立っていた。両手を広げて、体を震わせながら日下と対峙する。



そんな私の姿を見て、光流が小さく息を呑む音が聞こえた。




「っ……由奈、一体何して……」


「…………お願い…」


「!」


「お願い……光流を、殺さないで……っ」




焦る光流の声を無視して、私は日下に懇願する。……それは即ち、交換条件を飲むという私の答えだった。


日下が静かに口角を上げる。


背後で私の言葉を聞いた光流は、慌てて大声を荒げた。




「ッ、由奈!!駄目だ、何もするな!

俺は大丈夫だから、早く部屋から出て────!」


「光流」


「!」


「……光流、もういいの」




そう言った私の声に、光流が言葉を止める。


静かに顔だけ振り返って彼に小さく笑みを向ければ、光流は大きく目を見開きながら、私を見上げた。

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