第3話
しかし当時の私はまだまだ子供で、日下がわざわざ私にこんな話をしてきた意味をよく理解していなかった。
ただ単に『そうなのかぁ』と思うだけに留まり、この後起こる出来事に気付くことなく呑気に日常を送り続けていた。
佐上光流だか誰だか知らないけれど、私には関係のない人間じゃないか。
私には日下がいるし、万が一何かがあっても我が家はこの一帯で頭を張っている極道だ。
たった一人の男に負ける訳がないし、ならば安全は保障されている。
───そう安易に考えていたのだ。
何より日下がいたから。
日下の家系は代々若頭として坂下組を支えてた。彼も例外ではなくて、若頭の地位を継ぎ私の世話役を兼任していた。
父にとっても、深い信頼を置いたそれは強い部下だったのだ。
日下がいるなら何も問題はない。
そんな風に侮っていたから……バチが当たったのだと思う。
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