その鬼ごっこ、なんやねん?

崔 梨遙(再)

1話完結:900字

 これも小学生の時の話だから、30年以上も前の話。



 僕等の街には、おおきな“えべっさん”があった。1月9日から11日まで、バブル景気だったこともあってか? 沢山の人が街を歩く。今では人が減ったが、当時は身動き出来ないくらいの人混みだった。


 というわけで、その3日間、僕等は出動する。僕等はお参りはしない。目当ては露店だった。みんな、この日は500円とか千円とか小遣いをもらってくる。フランクフルト1本が100円だった時代だ。遊び方によっては楽しめる。


 そこで、リーダーの石田が言い出した。


「ここで、鬼ごっこしよか?」

「「「「「「「「「えー!」」」」」」」」」

「なんや? アカンか?」

「ここで離れたら、絶対に合流出来へんで」

「そこがおもしろいんやんか」

「でもなー!」

「それはキツイわー!」

「ええやん、ええやん、ジャンケンしようや」


 負けられない、必死のジャンケン、負けたのは陣内だった。


「100数えてから動けよ」


 僕達は足早に去った。100数えてたら、絶対にはぐれるわ!



 案の定、陣内君と合流出来ずしばらく立つと、また石田が言った。


「もう1人、鬼を増やそうか?」

「ノー! 鬼を増やそうとする石田が鬼に見えた」

「はい、ジャンケンポン」


 次の鬼は坂下だった。


「100数えてから動けよ」

「だから、100数えてたら完全に僕等を見失うって!」

「ほら、逃げろ-!」



 おそろしいことに、こういうことが何回も続いた。気がついたら、鬼が6人、生き残りが4人。鬼の方が多くなっていた。時間は9時過ぎ。石田は爽やかな笑顔で、こう言った。


「そろそろ帰ろか?」


“おいおい、鬼になった奴等はどうなるんだよ?”


「鬼になった奴らの話は、明日、学校で聞こうや」



 僕達は解散した。翌日、鬼になった者達は、10時、あるいは11時まで僕等を探してさ迷っていたらしい。恨めしげな目で僕等生き残り組を見る鬼達だった。



 だが、石田は言った。


「今日も鬼ごっこ、やろうぜ!」



 その日は僕が鬼になってしまった。時刻は8時。僕は迷わず家に帰った。




 皆様も、こんな呆れた遊びをしたことありますか?







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その鬼ごっこ、なんやねん? 崔 梨遙(再) @sairiyousai

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