子供心を愛し往く
赤麦雅屋
ポジティブに今を生きて往く
キダルト。新たな造語を耳にした。
キッズ(子供)とアダルト(大人)を掛け合わせた造語であり、子ども心を持ち続けている大人をターゲットにした商品を販売する、玩具業界からポジティブな用語として生まれたものらしい。
近年、大人の購買層に向けた子供向け作品の商品展開は多く見られる。それとはまた別に当時を生きた子供が、大人になり、かつて好きだった物を、公式という立場に回り商品・メディア展開する流れも見かける。
かくいう筆者も、このキダルトに分類される商品展開には度々心を奪われている。心はいつだって幼き日のままに、好きなものを好きに愛でたいのだ。
かつて好きだったものは年を取っても好きなままであり、自分の中に根付いた好きの感情は消え失せたりはしないのだなと、嬉しくもあり、こうしたポジティブワードが生まれたのは喜ばしいことだとも思っている。
それと同時に思い出す。あまり裕福な家庭ではない──かといって極貧と呼ばれるほどではなく、日常生活は送れていたが──やや貧乏な家庭で育った筆者は、幼い頃から我慢を繰り返しながら生きていた。わかりやすく言うと、誕生日プレゼントやクリスマスプレゼントというものが、十歳辺りで自然消滅していた家庭だ。親が厳しいのではなく、物理的にプレゼントを買い与える金銭的ゆとりがなかったのである。それでも、年齢が一桁の幼児期にはプレゼントを貰っていた記憶がある。その出来る限りの親の愛情には、今も感謝している。
お小遣いというものも貰ったことはなく、習い事も通ったことがなく、学校で使う勉強道具や着る服のほとんどが、上のきょうだいからのお下がりだ。叶うならピアノとか習ってみたかったが、それに対しての不満はない。全ては仕方のないことだと、すっかり冷めながら青春時代を生きてしまった。
これが欲しい、あれを習いたい、全てが金銭的理由で選べなかった。そもそもの選択肢がなかったのである。それは仕方のないことだと、冷めきった心は随分と柔和になり、年を取った今なら笑い話にできる。
さて、その反動もあってか、働き、金を稼ぎ、親元を離れ、己の力一つで生活できるようになり、自由になった今現在。かつての我慢の反動が返ってきたのか。
当時欲しいと願った物も、今なら己の稼いだ金で買える。幼い頃から好きだった作品やキャラクターは、今もまだ大好きであり、今現在も公式からグッズが展開されてるおかげで安心して推せる。ありがたい限りだ。
子供心を持ち続けている大人の中には、子供時代に心を封印しながら、我慢を繰り返しながら、心を早く大人に成長せざるを得なかった大人が多いのではないか、などと経験からくる持論を述べてみる。
当然、誰もが皆、同じ体験をしてきたわけではない。抑圧からの解放……とはまた別問題かもしれないが、小さな存在では抗えない・解決できない、どうしようもない現実というものがあり、かつての幼かった自分の頭を、己の手で慰めるように撫でながら、幼い頃に好きだったものを、今も同じく愛したい。当時愛せなかった分まで。(当然、生活に支障が出ない範囲で、健全に、を忘れるなかれ)
きっと自分の心はいつまでも子供のままだろう。そして、子供心を抱えたままで、身も心も強くなった今、大人の力で子供心を愛して生きよう。そんな自分にとって、キダルト層への商品展開は、願ったり叶ったりである。
キダルトというワードについて、これからもポジティブな意味合いで使われ続けることを願いながら、子供心と共に、3時のおやつでもいただくとしよう。
ホットケーキでも作ろうか。
子供心を愛し往く 赤麦雅屋 @akamugimasaya
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