第2話 初夏の夕暮れ
「立浪さん、また、歩くの早いよ。もっとゆっくり歩こうよ」
「だって、おなかすいたじゃない。からやまはもうすぐそこよ」
圭ちゃんってなんて優しいんだろう。
backnumberは歌う以外にも女性歌手の歌ばかり歌ってくれた。
初夏の風が心地よい。
今まで純一には泣かされっぱなしだった。
俺は白血病だからお前を幸せにできない。
とか、待ち合わせにきてくれなかったりとか、ラインブロックされたりとか。
そもそも付き合っているかわからない友達以上恋人未満の関係で、大学3年間来てしまった。
そんな中、泣いている真琴に圭一は教室で悩みをいくらでも聞いてくれた。
今日は楽しいカラオケだった。
久しぶりに笑った。
久しぶりに歌った。
久しぶりに唐揚げをたくさん食べた。
「圭ちゃん、しばらく就活で会えなくなるね」
「また、立浪さんの街にきてカラオケ歌おうよ」
「うん、今日は楽しかった。ありがとう」
「俺も楽しかった。またね」
圭一は大きく手を振って帰っていった。
なんだか、今日のこの日がいつまでも思い出に残りそうだな。
真琴は黄昏時の夕暮れを見ながら切に思った。
圭一のラインがつながらない。
一週間たっても二週間たっても一か月たってもつながらない。
ブロックされた。
同期の千紗にキャンパスであった時、圭一はどうしているか尋ねた。
「あら、知らなかったの?立花君アメリカに留学したんだよ。アメリカの大学に編入するんだって」
聞いていない。
また会おうと言ったじゃないか。
あれが最後だったのか?
純一も圭一もみんな離れていく。
淋しい。
淋しい。
気が付けば真琴は廊下で人目もはばからず泣きじゃくっていた。
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