第16話 マーロ帝国の将軍と海軍団とが潰滅する
海を渡って、ヴァルゴに向かったスール(南大陸)のマーロ帝国の大艦隊は革命の風雲児(と言われた)ロム・パクスが内乱状態のヴァルゴで諸侯が皆王を名乗って乱立するなか、全てを瞬時に統合して王を束ねる皇帝を称し、君臨したとき、航路を変えた。
提督にして軍団長なる奴流毘(ヌルヴィ)は、
「あくまで内乱鎮圧の援助として向かったが、今の情勢では不要で、かつ、ロムに受け入れられようはずもない。
このまま戻るには水や燃料の補給が必要だ。
現在地から最も近い港のあるフロレンッチェ王国に向かうぞ。チュザーレ王へ使者を遣わせ」
そう命じてから、
「それから、惨虐(ザンギャク)を呼べ」
明るく乾いて暑く気怠い昼下がり、アンニュイはバル(大衆酒場)で青い酒を啜っていた。草木はほとんどない。わずかな潅木。
街道沿いだ。
場所はフロテンッチェとロードの国境。
龍馬を駆って来たジョルジュが勢いよく扉を開ける。まるで叩きつけるようだ。
「来たよ。アンニュイ。間違いない。マーロだ」
「来たか。では、可哀想だが、異国に屍を晒してもらおう」
優しきたおやかな青年が立ち上がると、轟然とした闘気を放つ。青白い炎。
アンニュイとジョルジュは龍馬を駆る。
「将軍あれは」
将校の一人がこちらへ向かって駆け下りて来る二騎の龍馬を指差す。
眩しげに惨虐(ザンギャク)は見上げた。そして、気がつく。
「ばかな、なぜ、ここに」
たちまち二騎は五万の軍団の前に立ち塞がった。
ジョルジュが大音声する。
「あさはかな。
神の恩寵を受けし我らがお前たちの浅知恵を見抜けぬと思ったか」
憤怒を噴き上げる惨虐(ザンギャク)は」髪を逆立て、
「殉真裂士だ、殺せ」
怒り狂った兵士たち、剣と弓矢とが一齊に鬨の声を上げる。
怒りと恐怖、騒乱と土埃、血煙。
ジョルジュの太陽の矢はミサイルのように一矢で数十を殺戮す。
静寂。五万の屍が累々と重なるのみ。石碑と碑文を残す。
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