第14話 ヴァルゴ王国内乱
ヴァルゴ王国で内戦が起こる。これもあちこちで熾った神聖イ・シルヴィヱ帝国の陰謀によるもの、その国に諜報員を忍び込ませ、暗躍し、煽動し、内政に干渉して国の秩序を乱し、人心を動揺させ、国家弱体化への契機を作る。
ヴァルゴ内戦もそういったものの一部だ。
同じようなことが世界各地で起こっている。
大陸の中央南部を除けば、北大陸のほとんどを占めるイ・シルヴィヱは大小数十カ国が集まるある中央南部を逆Uの字のように囲って(蔽って?)いるのだ。
なお、一口に中央南部と言っても、南北に二万七千キロメートルもある。南は赤道に近く、北は北極圏に迫る。
何しろ、この地球(イデア・アース)の球体表面積は二十億四千平方キロメートルもあるのだ。(娑婆世界の地球の約四倍)
ヴァルゴ王国は中央南部の南端にならぶ諸国の一つで、そのうちの最も東側にあり、マル・メディテラーノ(裂大陸大海洋)に面している。その名のとおりヴァルゴ教が国教で、異教徒であるイ・シルヴィヱと国境が接しているため、数百年前から被害を受けやすい国のうちの一つだった。
なお、ノルテ(北大陸)中央南部の東から西に向けてヴァルゴ、ロード、フロレンッチェ、スパルタクスという順にならび、マル・メディテラーノに面する。
スール(南大陸)のある超大国マーロ帝国はヴァルゴ王国を古代から統治する聖ヴァーゴ王朝を支持し、善意の第三者として王朝を援けるため、五百の艦隊を出航させ、マル・メディテラーノを数千キロメートル北上した。
その兵十万。
だが、既にヴァルゴ国の革命勢力を支援するイ・シルヴィヱ軍が旋回式の砲台を附した重装甲戦闘車輛を千台、野戦砲部隊及び地上ミサイル部隊合わせて五万人を投じていた。
イ・シルヴィヱ軍を指揮するサムウェル将軍は、
「我ら正義の名において、正当にして正統なる真のヴァルゴ教徒を支援する。異大陸からの支援は無用。ましてや、世俗王朝を援けることは宗教の大義に背く。
もし、ヴァルゴの港のどこかに近寄るならば、ただちにミサイル攻撃し、灰燼に帰さしめん」
そのようにマーロ帝国の艦隊に通告した。
イ・シルヴィヱ軍参謀官のドミトリエルはサムウェルに忠言し、
「マーロが容易く撤退するとは思えません。しかしながら、奴らの兵器はほとんどが剣や槍や弓矢の類、比較的近代的と言えるものも、カタパルト(投石機)や連射式のバリスタ(据置式の大型弩)、原始的な鋳造の大砲などがせいぜいです。
しかも、陸上戦を得意とするマーロの軍において、海軍は歴史が浅い」
「そもそも、国が若い。膂力皇帝、羅范(ラハン)が一代で築き上げた帝国だ」
「おおせのとおり。
科学の進んだ我が軍には到底及びもつかない。
真っ当に抵抗することが不可能なのは先方も承知、しかし、奴らは元はと言えば、集団戦法に長けた騎馬民族です。
さまざまな戦術、手管を手管を弄するでしょう。油断はなりませぬ」
「承知しておる。
水面下には忍びを潜らせておる」
「いかがいたしましょうか、提督」
参謀長官の問いに、マーロ海軍の大将軍、若き無人(ムジン)は、
「航路を変えよ。
フロレンッチェのチュザーレ殿にご挨拶に参ろうぞ。
ところで、殉真裂士の動きはいかがか」
「ヴァーゴ王朝の依頼を断ったそうですが」
「さもありなん、王朝は世襲で腐っていた。ま、革命に大義があるというほどでもないが。
所詮は全て、世俗的欲とおのれの独りよがり、狂ったこだわり、願望の類よ」
「しかしながら、提督、ヴァーゴの依頼は断るが、イ・シルヴィヱはのさばらせないと言ったそうです」
「無報酬で戦うという意味か。相変わらず面白い連中だ。
我らには好都合。なおさら戦などで消耗してなるものか。
スパルタクスの皇帝レオニと皇太子ラコニクスは軍師クレトスとともに密かにオエステ(西大陸)の超大国、ヴォードの密使と会っていた。
使者グランドデッドは言った、
「メタルピシュカインペラステュート(ヴォードの首都)ではプロペラ式戦闘飛行機の生産が進んでおります。プロトタイプの機で、海上五千キロメートルの飛行にも成功しております」
「おおそれは頼もしい」
「イ・シルヴィヱのジェット噴射式超音速戦闘飛行機には遠く及びませんが」
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