第13話 侵略
アンニュイ、ジョルジュ、アッシュールらは再び流浪の傭兵生活に戻った。
ダルジェロはアカデミアでの教授生活に耽る。
又、裂士ではないが、強く連帯する賢者ユリアスは旅生活に復帰し、哲学者イマヌエルも市井に還って学究生活を送っていた。
いらふは……消息を断ち、いつものとおりの影の生活をしているであろう。
他の裂士たち、今回、ロードには来なかったイヴァント山のイリューシュやイユやアヴァ、イノーグ山の巫女騎士イシュタルーナと元少年傭兵ラフポワ、そして、アカデミアでダルジェロと一緒にいるであろうエルピスなどはいつもどおりの日々を送っていた。
十一名の裂士と、二名の智慧者。これが殉真裂士清明隊の主体で、最近はこれに従者が随う。
珍しく賢者ユリアス・コプトエジャがイマヌエル・アルケーを訪れた。
クラウド=レオン・ドラゴ連邦の第一首都クラウド(ちなみに、第二首都はクーガ。旧レオン・ドラゴ王国の首都)にある公立アルカディア大学の教授専用の寮の中にあるカフェだ。
「ひさしぶりだな、ユリアス。珍しいこともあるものだ。それとも、事件かな」
熱いブラック・コーヒーを啜りながら、ユリアスが言う、
「残念ながら、そう言うことだよ。
ロードのことだ」
「ロードか。ダルジェロの真咒はさらに桁外れになったな」
「彼の力は世界そのもの力を正しく流すことだ。理論上無限大で、神のごときと言われるのも当然だ。まさしく世界は神が運営し、ダルジェロはその力を使っているのだから。
叡智は正しく神を理解する」
「それを言いたくて来たわけじゃないだろ」
「そのとおり。
ロードは新政権が発足したが、依然、弱体だ」
「周辺諸国か」
「そうだ。イ・シルヴィヱの暗躍のみ語られるが、実際、周囲の強国も虎視眈々だ。イ・シルヴィヱに過日の勢いがない今、なおさらだ。しかも」
「まさか」
「そのまさかさ。
スール(南大陸)やエステ(東大陸)やオエステ(西大陸)の超大国も動き出している。我らのノルテ(北大陸)の諸国もそれら超大国と密約を結び、中小国は自らを売り、傀儡化している。
根は深いね。従前からの民族・宗教紛争や国家間の経済摩擦なども絡むから」
「再び世界大戦にならなければよいが」
「そのために来たのさ」
「アンニュイたちも知っているのか」
「むろん」
「では、どうして我らは撤退したのだ。誘き寄せる気か?」
「そうさ、恐らくはね」
「やれやれ」
ロード王国とは湾を挟んで向かい合わせであるスパルタクス帝国。なお、その湾に沿ってならぶ国家はこの二つの国の他にもう一つ、これまた大国であるフロレンッチェ王国である。
さて、スパルタクスの皇帝レオニと皇太子ラコニクスは軍師クレトスとともに円柱のならぶ神殿の奥、巨大な大理石製の戦闘神像の前で作戦会議をしていた。
「して、神聖イ・シルヴィヱ帝国は何と」
「派兵と武器供与」
「で、マーロ(スールの超大国)の膂力皇帝、羅范は」
「軍艦五百を派遣すると」
「兵力にしてどのくらいか」
「おおよそ十万かと」
「ふうむ」
「ここはチュザーレ(フロレンッチェ王)と共謀して殉真裂士と超大国とを欺こうぞ」
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