第7話 陰謀

 ロード王国は北大陸(ノルテ)の南部に位置する大国だ。多民族だが、征服者であるロード人が中枢となって、騎士道精神華やかな国家であった。

 神聖イ・シルヴィヱ帝国か比べれば遙かに規模は小さいが、それでも人口は一億を超え、生産力などを考えると、広大な領土であっても、ほぼ限界に近い。(広大と言っても、イ・シルヴィヱの十分の一ほどだが)

 これ以上は、イ・シルヴィヱのように科学を発展させない限り不可能であった。


 国王アダルシュタは玉座で側近らに囲まれながら、顔を顰め、苦々しく思い悩んでいた。

 まさしくネティフ公爵暗殺の報告を聞いているところであった。

「由々しきことである。国家の秩序と安寧を破壊しかねん。ネティフは我が側近、右腕にして財務大臣であった。次々と増税を行い、王侯貴族や富裕な市民の富を増やしたものである。よって、余への崇拝や貢納はかつてないものとなった。国家第一の功労者である。

 直ちに、犯人を捕らえよ」

「しかしながら、陛下、思うにこれは殉真裂士樣たちの仕業かと」

「何と、それは本当か」

「手口はどうにも暗殺者いらふ殿の手かと思われ」

「ぬぬぬ」

 王すらも思わず唸った。


 殉真裂士と言えば、数年前、四億人の大軍団で聖都市アカデミアを侵略しようとしたイ・シルヴィヱ軍を撃退した者たちである。

 クラウド=レオン・ドラゴ連邦(アカデミアの守護者を躬ら認ずる國)の協力があったとは言え、合わせて数万にしかならず、一万倍の敵を打ち破ったことになる。


 しかも、弓矢や刀剣。槍、戟などしかない者たちがジェット戦闘機や砲台附きの自走式装甲戦闘車両や弾道ミサイルや自動装填式機関銃などを装備した一万倍の相手に打ち勝ったのである。


 並の国家など二、三人に打ち滅ぼされかねない。


「いかにすべきか」

「閣下、これは分が悪すぎます。黙ってやり過ごすしかないでしょう」

「何ということか。神よ。

 おい、陰陽師はいるか」

「は、ここに」

「力の限り裂士どもを呪詛せよ」

「しかし、王よ、彼らは神の壽がれ、祝福された者たちです」

「構わん、神の意を損ねぬように祈れ。

 なお、卿らに告ぐ、財務大臣の代理として当面は税務長官が兼ねよ。以上だ」

 そう言い残して王は後宮へ去った。

 残った大臣や高官たちは苦々しい面持ちをするしかない。

 三々五々散って行く中、警察庁長官に情報局長が囁いた。

「イ・シルヴィヱの使者が報告を求めていることは知っているだろ」

「むろんだ。王もご存じだろう」

「なぜ、王は報告を命じないのか」

「何かお考えがあるのであろう。それに、イ・シルヴィヱのことだ、独自の情報収集方法で既に把握済みだろう」

「そうか。しかし、このまま裂士どもを放っては置けんな」

「バカな考えを起こすな」

「奴らはただの武者に過ぎん。知謀はこちらが上じゃ」

「そう思って何人が滅んだことか」

「何の、端武者どもに好き勝手にやられて堪るもんか」


 

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