男爵令嬢に転生したら実は悪役令嬢でした! 伯爵家の養女になったヒロインよりも悲惨な目にあっているのに断罪なんてお断りです
第73話 魔術実技で火の玉をすぐに出せるようになり、皆に自慢したら、やはり私が一番下手でした
第73話 魔術実技で火の玉をすぐに出せるようになり、皆に自慢したら、やはり私が一番下手でした
翌朝、私はコンスと久々に会った。
「コンス、久しぶり」
私が声を掛けると、
「クラウ元気にしていたか」
コンスが私を抱きしめてくれた。
「私がいない間、大変だったみたいだな。ポピーから色々聞いたぞ」
コンスが私を心配してくれた。
「まあ、今日からは私がクラウを守ってやる。大船に乗ったつもりでいろ」
コンスは私に心強いことを言ってくれた。
コンスは停学の間は、修行と称して騎士団に入り浸っていたらしい。
「また強くなったからな。騎士団長に勝つのもあと少しだ」
嬉々としてコンスは報告してくれた。
「しかし、騎士団に比べたら剣術部の面々はまだまだだ。あんなんでは騎士団には到底入れないからな。今日からビシバシと特訓することにしたのだ」
剣術部の面々が聞いたら泣きそうなことを平然とクラウは話していた。
まあ、我が校の剣術部の面々の力が上がることは良いことだと思っておこう。
朝食会場には私を襲ってきた面々は停学中だとかで、いなかった。
「今年は停学者が多すぎます」
アデライド先生が怒っていた。
また、補講が厳しくなるんではないかと私は戦々恐々としていたんだけど……
ピンク頭のデジレは相変わらずルードにしがみつこうとしていた。
「ルード様。今度の魔物討伐訓練。とても怖いんです。怖い魔物が出そうで……だからちゃんと守ってくださいね」
腕にすがりついて私にはない豊満な胸をスリスリしているんだけど……
「何を言っている。デジレ嬢。訓練では自分の身は自分で守るのが基本だぞ。聖女とはいえ、自信がないのならば剣術部でも入ればいいではないか」
ルードが投げやりに言っていた。
胸の大きさでは癒やされないらしい。
「ええええ! 剣術部なんて野蛮な部、怖いです」
ピンク頭がブリッコしてくれるんだけど……
「魔物よりはましだろう。君の好きな男が大半だぞ」
ルードも言うことを言うと聞いていたら、
「私はルード様に教えてもらいたいです」
ルードの言葉を無視してピンク頭は更に胸を擦り寄せていた。
「俺は放課後は忙しいんだ」
ルードが言うけれど、それは私を虐める補講に忙しいんじゃないだろうか?
と思わないでもなかった。
まあ、ピンク頭の言うことを聞くのも癪だから何も言わなかったけれど……
そして、その日の4限目は魔術実技の時間だった。
私達は着替えて訓練場に集まった。
「ようし、みんな、だいぶ魔術は使えるようになったな!」
マルタン先生が皆を、特に私を見渡して言ってくれた。
「「「はい」」」
私も元気よく返事した。
そう、灯り魔術が使えるようになってから、私も頑張って色々出来るようになったのだ。
「宜しい。今日はこれから行われる魔物討伐訓練で使う、魔術に対して練習していく」
皆をみてマルタン先生が発言した。
「攻撃魔術にも色々あるが、やはり簡単なのはまず、火魔術だ。火の玉、ファイアーボールについてやっていく」
先生が一同を見渡した。
「ファイアーボールが使えるものは手を上げてくれ」
5,6人が手をあげた。
「よし、コンスタンツェ」
「はい」
コンスが前に出た。
「では、あの的に向かってファイアーボールを出してくれ。皆よく見ていろよ」
先生がコンスに指示した。
「ファイアー!」
コンスが手を前に差し出して叫ぶと、野球ボールほどの火の玉が出て、それが一直線に的に向かって飛んでいった。
ドカーン!
爆発した。
その爆炎が消えた後には的はなくなっていた。
「そうだ。とてもいい見本だった。コンスタンツェは自分で練習に入っていいぞ」
「はい」
コンスは返事をすると端の練習コースに向かって歩いていった。
「よし、次はクラウディア」
「えっ、はい!」
まさか私が当てられるとは思ってもいなかったので私は驚いた。
「ファイアーボールは使ったことがあるか?」
「いえ、初めてです」
「よし、じゃあ、的に正対して」
「はい」
「手を伸ばして」
「はい」
私は先生の指示通り、的に向けて手を伸ばした。
「呪文はファイアーだ」
「ファイアー!」
私は叫んだ。
でも、すぐには火の玉は出なかった。
「クラウディア、イメージだ。自分で火の玉を思い描くんだ」
「火の玉ですね」
私はコンスの火の玉を思い描いた。
「よしいけ!」
「ファイアー!」
今度は火の玉が出来て、消えてしまった。
「あと少しだ。もう少し強く念じろ」
「はい」
私は火の玉を念じる。
「よし、行け」
「ファイアー!」
今度は火の玉は出た。
コンスの半分くらいの大きさだったが、そのまま飛んでいった。
まあ、的を大きく外れて飛んでいったけれど出来たからとりあえず良いだろう。
「先生、出来ました!」
「よし、よく出来たな。お前もコンスのところで練習してこい」
「はい」
私は元気よく歩き出した。
「うそ、なんでクラウが簡単にできるんだ!」
ベルナールら男性陣が驚いていたけれど、
「ふん、私もやる時はやるのよ」
私は自慢げに皆を見下してやったのだ。
「皆見たな。一番できないクラウディアでも出来たんだ。これで全員今日はできるようになるはずだ」
私はコンスの所に向かう途中で後ろから先生の言うことを聞いてずっこけそうになった。
何なのだ! それは!
流石にムッとして先生を睨みつけた。
でも、先生の言うように、皆次々に出来るようになっていった。
というか3回もやったのは私くらいで、皆一回で出来るようになっていたんだけど……
なんで?
それも皆、結構、的に当たっているのだ。
私は全然的には当たらなかった。
結局一番できないのは私だったのだ。
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