第72話 友人の部屋で今までの件を報告して、すぐにある魔物討伐では気をつけるように注意されました

私は徹底的にルードに絞られて、フラフラになって寮に帰ってきた。

そして、当然のごとく、御飯の時間には間に合わず、ルードは用があるとかで私をさっさと寮に送ってくれると、そのままあっさりと帰ってくれたのだ。


私はやむを得ず、そのままヘレナの部屋に突撃した。


「ちょっと、私はあんなたのお菓子供給係ではないのよ」

ヘレナは文句を言ってきたが、あっさりとクッキーを出してくれた。


「有難う、ヘレナ」

私はお礼を言うまもなく、ポリポリとお菓子を食べだしたのだ。


「で、公爵家はどうだったの?」

ヘレナが聞いてきた。


「そうだ。ヘレナ、あんたルードが皇子様だって私に教えてくれなかったでしょう」

私は思い出してヘレナに食ってかかった。

「はい? あなた、ルード様が皇太子の息子だって知らなかったの?」

唖然としてヘレナが私を見た。

「そんなのその辺りの犬でも知っているのに!」

「はああああ! 犬はいくら何でも知らないわよ」

「でも、子供でも知っているわよ」

私が文句を言うと、平然とヘレナは反論してくれた。


「私はカッセルの人間で継母に虐待されていたから帝国の常識には疎いのよ」

「でも、ゲームやっていたら馬鹿でも知っているでしょ」

「だから私はやったことがないって言っているでしょ!」

「そうだったわね」

やっとヘレナは納得してくれたみたいだ。


「でも、いくら何でも皇太子の息子が誰か知らないのはまずいんじゃない?」

ヘレナに言われてそのとおりだと反省も少しした。


「だってこの学園。名前呼びしかしないから大半の子がどこの貴族の子供か知らないわよ」

「まあ、貴族だったら入る前に教え込まされるけれどね」


ヘレナは肩を竦めると、

「じゃあ、今まで散々ルード様と一緒にたのに知らなかったんだ。じゃあ皇太子妃様と会っていたのも知らなかったの?」

「そうよ。ルードのお母様だとは聞いていたけれど、皇太子様に言われて初めて知ったんだから」

「えっ、あなた皇太子さまにお会いしたの?」

「そうよ、いきなり、頭下げられてびっくりしたわよ」

「えっ、あなた、皇太子さまに頭下げられたの?」

そこで私は金曜日の夜のことからあったことを話したのだ。


「そうだったんだ。悪役令嬢が属国の男爵家の令嬢っておかしいと思っていたんだけど、これで判ったわ」

ヘレナが言ってくれた。

「何が判ったのよ?」

「本来はあなたはお母様が亡くなった時に公爵家に養子にもらわれているのよ。それでゲームの始まる前までにルード様の婚約者になっていたんだと思うわ」

ヘレナが言ってくれたんだけど……

「ええええ! 男爵家の令嬢なのに?」

私が信じられなくて聞くと、

「だって、あなた、今のライゼマン公爵様からした、妹の孫よ。別に養子にしてもおかしくないじゃない」

「でも、実際はそうなっていないわよ」

私が言った。そう私はゲームが始まる学園入学の時は男爵家の令嬢だったのだ。


「まあ、誰かが邪魔をしたのかもしれないけれど、別にあなたがライゼマン公爵家の養子になることに問題はなかったわ」

「問題ないかどうか判らないわよ。だっておばあさまは皇帝陛下を振って結婚した末に生まれたのが私だし、陛下からしたら公爵家が私を養子にするのは嫌だと思うわ」

ヘレナの言うことに私が反論した。


「でも、問題ないって皇帝陛下はあなたの所領を戻してくれたんでしょ」

「まあ、結果的にはそうなったけれど」

「あなたが公爵家の令嬢になればルード様と婚約するのも何も問題ないじゃない」

「でも、エルザ様もライゼマン公爵家の出身だし、二代続けてライゼマン公爵家から出るのは流石にまずいんじゃない?」

「うーん、それはそうだけど」

「それに、ピザン公爵家にはコンスがいるのよ。学年も同じだし、普通はコンスがなるんじゃない」

「まあ、確かにそうだけど、でもゲームではあなたがルード様の婚約者だったのよ」

ヘレナは言ってくれるけど、でもそれってゲーム会社の勝手な都合ではないんだろうか?


「それに、最後はヒロインの聖女がルード様と結婚してめでたしめでたしになるんだから」

「えっ、あれとルードが結婚するの?」

私にはどうしてもその未来は見えなかった。


「あの聖女も変よね。ゲームではもっと純情っぽくて可愛いのに。あれも転生者だと思うけれど、ちょっと強引すぎるわよね」

「まあ、聖女があれだからゲームの中身も変わったんじゃないかな」

私は言ってみた。


「まあ、そうかも知れないけれど、もうじきある魔物討伐訓練気をつけなさいよ」

「えっ、騎士学校でもないのに魔物討伐なんてあるの?」

私が驚いて聞くと

「そうよ。王都の傍に魔物が出る森があってそこの魔物を討伐に行くのよ」

「それって大変じゃない」

私が言うと

「本当にあなた学園のこと何も知らないのね」

馬鹿にしたようにヘレナが言ってくれた。

「だって仕方がないじゃない。ギリギリで家からルードに助けられてすぐにクラス分けの試験だったんだから、学園案内もよく見る暇がなくて」

「少しくらい見たほうが良いわよ」

ヘレナに言われて、さすがの私も部屋に帰ったら見てみようと思った。


「それよりもゲームでは魔物討伐の時もイベントが有るわ」

「やっぱり」

私はうんざりした。


「悪役令嬢が聖女を亡き者にするために魔物を放つのよ」

「私はそんな事しないわよ」

ヘレナの言葉に私は即座に否定した。


「まあ、少しゲームが変わっているから、どうなるか判らないけれど、気をつけなさいよ。

このまえみたいに、狙われるのは聖女じゃなくて、あなたのような気がするから」

ヘレナに言われたけど、気をつけるってどうすれば良いんだろう?

この前の狼の魔物ですら、何も出来なかったのに!

私は不安しか覚えなかった。

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