第54話 庇ってくれるものがいなくなって聖女に虐められましたが、友人がやり返してくれました

私はルードの胸で号泣してしまってなかなか涙が止まらずに大変だった。

ルードが必死にハンカチで私の涙を拭いてくれたけれど、中々止まらなかったのだ。

ルードの制服も涙だらけにしてしまった気がする。


結局、馬車までルードにお姫様抱っこされて運んでもらったし、とても恥ずかしかった。


出てくるときに見た大聖堂は大きな穴が開いているのを見て、目が点になった。


大聖堂の結界をぶっ壊すためにコンスが宝剣でぶった切ってくれたと後で聞いた時は本当に驚いた。私は属国の男爵家の令嬢にすぎないのだ。普通は教会との軋轢を気にして適当に探すふりをしてお茶を濁して終わりなのだ。それを教会に喧嘩を売るのを気にせずに宝剣で障壁をぶっ壊してくれたのだ。

やってくれたコンスには私は感謝することしか出来なかった。必ず、コンスの恩には報いると私は決意したのだ。



「当然のことをしたまでだ」

とコンスは平然と言ってくれたけれど、普通は後のことを気にして、やってなんてくれない。

私のためにむちゃしてくれて泣きたいほど嬉しかった。


でも、国の宝剣をそんなことに使って良かったんだろうか?


私が心配したとおり、翌日からコンスは一週間の停学処分になってしまった。

教会の結界を叩き壊したことに対する罰則だそうだ。


「私のためにしてくれたんだから私も責任を取ります」

って言ったら、なぜかアデライド先生の礼儀作法の補講が倍に伸びたんだけど……何故に?


最悪だった。言うんじゃなかった……


私にとっては停学よりもひどい処分だ。


でも、コンスもつらい目にあっているんだから私も我慢せねば。




まあ、ルードもコンスと同じで一週間の停学処分を食らっていた。

教会としては今回の私の誘拐事件について当事者だけの処分で済ませたかったみたいだが、ルードが強硬に主張したみたいで、大司教の給与一か月分の返納になった。

「あの狸おやじの処分が降格にしたかったんだがうまくいかなかった」

ルードはすまなそうに言ってくれたけれど、高々属国の男爵令嬢のために、ここまでやってくれた二人には感謝の言葉もないのだ。


そして、ルードの側近たちもコンスもいなくなれば、私への令嬢達の当たりはきつくなった。ヘレナとポピーだけでは私を守るのは身分的にも力的にも難しかったのだ。


ドボン

三人で歩いていた私達は水を頭の上からもろに被ってしまった。


ずぶ濡れだ。


誰がやった?


見ると目の前にピンク頭のデジレが達がいたのだ。


「あーら、水浴びするなんて、そんなに暑かったかしら」

真ん中のデジレは白々しく言ってくれた。

「本当に田舎者は、変わった風習がおありなのですね」

「なんですって」

ヘレナがぶちギレていた。

「ダメよ、ヘレナ。あなたまで停学になるわ」

手で火球を出そうとしたので慌てて、止める

「ああら、男爵の分際で聖女様に逆らおうと言うの? そんな事したら魔物が現れても、聖女様は癒してくれないわよ」

「ふん、そんな、心の腐った聖女なんかが本当に癒せると思っているの?」

馬鹿にしたようにヘレナが言ってくれた。


「な、なんですって!」

デジレがいきり立った。

「あなた聖女様になんて事を」

「あなた達にも良いことを教えてあげるわ」

馬鹿にしたようにヘレナは集団を見下したのだ。

「聖女が醜い事ばかりしていると、聖なる力が使えなくなるのよ」

「何言っているのよ。そんなこと無いわ」

デジレが言い返すが、

「あーら、あなた、そうなったことがないの? 私は一度なったから、それ以来酷いことは一切していないわ」

「何を言っているのよ? あなたが聖女なんかになったことはないでしょ」

取り巻きの一人が叫んだが、

「あるわよ。何回もね」

「はああああ! どのみち夢でも見たんでしょ」

「そうよ、夢の中での事よ。デジレさん、あなたもあるんでしょ。何回も」

「ま、まさかあなたも転生者なの?」

「で、デジレ様何をおっしゃっているのですか?」

「な、なんでもないわ、行くわよ」

デジレが歩き出そうとした時だ。

その瞬間、デジレは足をもつれさせて、顔面から地面に激突したのだ。

「あなた、何してくれるのよ」

デジレが後ろを向いて叫んでくれた。

「えっ、何もしてないわよ」

私は驚いて言った。

「変ね、天罰でも当たったんじやないの」

*************************************************************************

ここまで読んで頂いてありがとうございます。

フォロー、評価して頂けたらとてもうれしいです


別にカクヨムコン10異世界冒険部門

『婚約破棄されたので下剋上することにしました』

https://kakuyomu.jp/works/16818093090691950432


も更新していますのでこちらもよろしくお願いします

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る