第49話 大聖堂見学を皆が本当に心配してくれたので、かえって安全だと思ってしまいました

私が部屋に帰ると、なんか目を吊り上げたヘレナに捕まってしまった。

ヘレナはムッと膨れた顔をしているんだけど……


「クラウ、何をのほほんとしているのよ。ルード様といちゃいちゃして!」

ヘレナはいきなり文句を言ってきた。


「別にいちゃいちゃしてないわよ!」

私もムッとして言い返すと、

「はああああ! あなたここから見てたら本当に楽しそうにしてたわよ」

「えっ、ここから見えるの?」

「丸見えじゃない! 馬鹿じゃないの? 指に結婚指輪つけてもらっているけど、周りの女たちからどうされても知らないわよ」

私の指を見てヘレナが指摘した。

「それ、どのみち、ルード様とお揃いなんでしょ」

ズカッ、クリティカルヒットされた。

そう言えばヘレナも転生者だった。


「いや、だから、結婚指輪なのは前世日本だけでしょ! この地では違うはずよ。ルードは何も言わなかったし」

私が言うと

「何言っているのよ。新大陸の風習みたいだけど、最近カップルでお揃いの指輪するのも流行りだしているのよ。ラーラ辺りに知られたらただごとでは終わらないわよ」

「でも、ルードがお守りだって言うんだもの」

「なんで二人して同じもの持つ必要があるのよ」

ヘレナに言われたら、私は返す言葉がなかった。

確かに二人して同じ指輪を持つ必要はない。


「クラウ、あなたはもう少し気をつけなさいよ。でないと知らないわよ。それでなくても最近あなた達二人寮の前でイチャイチャしているでしょ。イルマたちがそれでなくてもブツブツ言っているのに!」

「だって、ルードが寮の前まで送ってくれるって言うし、この前カスパーさんに送ってもらったらそちらのほうが大変だったじゃない」

私が文句を言うと


「あんたら二人はレセプションで2人でお手々を繋いで逃げ出した実績あるもんね」

ヘレナはズカズカと過去の黒歴史を話してくれるんだけど、

「あれはルードが悪いのよ。女たちから逃げ出すのに私をだしに使うから後で皆に睨まれることになったんじゃない」

私が文句を言った。


「でも、本当に勉強しているの? 勉強を理由にしてイチャイチャしているんじゃないでしょうね」

疑り深そうにヘレナが聞いてくる。


「してるわよ。今日なんて最悪だったのよ。せっかくルードがフルコースの料理を用意してくれたのに」

「なんですって! ルード様が用意して下さったっていうことは素晴らしい料理だったんじゃないの? やっぱり勉強していないじゃない」

私の言葉を勘違いしてヘレナが怒り出したんだけど、


「何言っているのよ。アデライド先生の指導付きよ。一挙手一投足注意されて、もう全然食べた気がしなかったわ。あなたやりたいの」

「うーん、アデライド先生は余計だったけれど、フルコースの食事は食べたかった」

「私は全く食べた気がしなかったわ。何なら代わってあげようか」

「遠慮しておくわ」

ヘレナはあっさりと断ってくれた。


「それよりも、あなた、明日は教会の見学だけど、教会の奴らに狙われているの理解しているの?」

ヘレナがいきなり話題を変えてくれた。

「ルードにも言われたんだけど、教会が私を狙っていたのは、ゲームの世界の話でしょ! 確かにゲームでは私は悪役令嬢だったかもしれないけれど、今は、辺境の属国の男爵家の令嬢なのよ。そんな私を教会が狙う理由がないんじゃない」

私はヘレナに反論した。


「私も信じたくないけれど、何がどうなっているか判らないけれど、今のルードはあなたとおそろいの指輪するくらい仲が良いじゃない。ルードとデジレをくっつけたい、教会にしたら、あなたは本当に目の上のたんこぶなのよ」

「何言っているのよ。私とルードは幼馴染なだけよ」

「めちゃくちゃ仲の良い幼馴染よね」

ヘレナが嫌味を言ってくれるが、

「何言っているのよ。いつも虐められているわよ」

「いじめるのは好きな証拠だって言うじゃない」

「言わないわよ」

子供でもないのに、何が嬉しくて好きな相手を虐めないといけないのだ。絶対におかしい。

確かに嫌われてはいないけれど、構ってくるのは絶対に私をいじりたいだけだ。

ルードに好きな人が出来れば即座にポイされると思う。

私がそう言うと、ヘレナは何故か頭を抱えていた。


「好きでもない女に自分の色ついたネックレスなんて絶対に贈らないわよ」

なんかブツブツ言っているけれど、良く聞こえなかった。


「ようく聞いて! あなたが公爵令嬢ならば何かあったら公爵が許さないから教会も手を出さないけれど、辺境の属国の男爵令嬢なんて何かあっても普通は誰も気にしないわ。お茶を濁す程度に捜査して、それで終わりよ。ゲームの悪役令嬢よりも今の貴方のほうがやばいんだから。絶対に私達から離れたらダメよ」

ここでも、ヘレナに散々念を押されたのだ。


翌朝、私達は馬車に分乗して移動した。

私はコンスとヘレナとポピーと一緒だった。


「何か教会の動きが怪しいからな。クラウは私から離れたらダメだぞ」

馬車の中では、コンスにまで言われた。

「ありがとう。でも大丈夫だと思うけれど」

「いや、あの大司教がわざわざクラウに会いに来たんだろう。

ものぐさで態度のでかい大司教が、普通、女生徒に会いに学園までわざわざ来ることはない。絶対に何か良からぬことを企んでいるはずだ」

コンスまで、私に忠告してくれた。


「もし私からはぐれて何かあったら悲鳴を上げろ。

たとえどこにいても、絶対にクラウの元まで駆けて行ってやる。その時は例え、大聖堂を瓦礫に変えても助けてやる。

まあ、生意気な教会はたまに鉄槌を下してやる必要もあるからな。拐われた友人を助けるといった正々堂々とした理由があれば両親も許してくれるはずだ」

コンスの言葉がどんどん過激になっているんだけど……


確か、大聖堂は200年以上昔に建てられた文化財だ。

それを壊すと問題なると思うんだけど……


まあ、コンスの言葉によると正義さえあれば何をしても良いそうだけど……

それは違うような気がする。


私は皆にいろいろと言われてそこまで周りで注意してくれたら、かえって安全なんじゃないかと思ってしまった。

でも、それは浅はかな考えだったのだ。

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ここまで読んで頂いてありがとうございました

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