第48話 お守りと言われて薬指にルードとおそろいの銀色の指輪をはめられました
「どうした、クラウ! あまりの料理のおいしさに感激したのか?」
料理、いや違う、礼儀作法の補講が終わって、寮に送ってくれる途中でルードが言ってくれた。
「ルード、私の顔見てよくそんなこと言えるわね!」
私は意地悪なルードを睨みつけた。
「えっ、クラウのほっぺは柔らかそうでつねりがいがありそうだけど」
なんかルードからは斜め上の回答が返ってきた。
私は慌ててつねられないように、頬を隠した。
「何してるんだ。つねるわけないだろ」
少しムッとしてルードが言ってきた。
「意地悪ルードならやりかねない」
「やらないって。それに最近意地悪していないだろ」
わたしはそのルードの顔をまじまじと見た。
「よく言うわね。私生まれて初めて食べるおいしそうなコース料理を食べられると思って期待したのに、アデライド先生の礼儀作法の指導で味なんか全然しなかったんだから」
私は涙目でルードに文句を言った。
「えっ、俺がお世話になっているときは普通にコース食べていたじゃないか」
「そんな昔の事覚えているわけないでしょ。それに帝国のコース料理は初めてじゃない。継母が来てからは満足に食べられたことなんかなかったんだから」
私がむっとして言うと
「えっ、そういえばそうだったな」
初めて気づいたような顔しているけど、意地悪ルードだからどこまで本当かわからない。
「信じられない。本当に初めて食べるような料理だったのに、それを補講にするなんて、本当にルードは意地悪なんだから」
私がむっとして言うと
「いや、悪かったよ」
「ふんっ」
ルードが謝ってきたけれど、私は許せなかった。
「判った。じゃあ今度はちゃんとコース料理食べさせてやるから」
「本当に? また授業の一環じゃないでしょうね」
私が疑り深そうに聞くと、
「いやいや、今度はそんな事しないよ。補講なしに食べに連れて行ってやるから」
「約束よ。じゃあ指切り」
「お前な、そこまで信用していないのかよ」
「だって、意地悪ルードだもん」
私が唇を尖らせて言うと、
「仕方がないな」
ルードが小指を出してきた。
私がその小指に自分の小指を絡ませると
「嘘ついたら針千本のーます!」
そう言って指を切ったらもう寮だった。
私はせっかく料理を食べさせてくれるという約束を何らかの理由をつけて反古にされるのが嫌で、さっさと入ろうとしたら、ルードに手を掴まれた。
「えっ、何するのよ!」
私が文句を言おうとしたら
「明日の教会見学、気を付けろよ」
真剣な顔をしてルードが言ってくれた。
明日は社会見学で、教会の大聖堂と孤児院の見学に行くことになっていたのだ。
「判っているわよ。アデライド先生からも注意を受けたし」
私が言うと、
「聖女からなにか言われなかったか?」
ルードが聞いてきた。
「えっ、デジレさん、そう言えば今日から復帰したのよね」
あのピンク頭、ピンクの頭もそうだけど、行動からしてもとても目立つのだ。
早速、廊下で男どもに囲まれていた。
なんか皆とベタベタしていたし、さすがに伯爵令嬢としてはまずいのではないかと私でも思ってしまった。
お昼休みはルードを追いかけていたように思う。
ルードに冷たくあしらわれて、ざまあみろと少し溜飲を下げたのは内緒だ。
「何も言われていないけれど」
そう言えばコンスと歩いていたら憎々しげに私を睨んでいたこともあったような気がした。
「あいつからクラウに謝らせろって教会には言っておいたんだが」
ルードが忌々しそうに言ってきた。
「えっ、良いわよ。わざわざ謝ってもらわなくても。あいも変わらず嫌われているみたいだから」
また嫌味を言われるのが落ちだろう。
あの目は絶対に私を嫌っているめだ。
今度まともに会ったらまた何を言われるか判らない。
もっとも、それは他の令嬢達の大半もそうだったが……
そう考えていたら握っていた私の左手を持ち上げて薬指に何かを付けてくれた。
「えっ?」
私はそれを見て唖然とした。
それは銀色の指輪で私の薬指に大きさを変えてパシッと嵌まってしまったのだ。
「ちょっ、ちょっとルード何をするのよ」
私は真っ赤になって言った。
「お守りだ。何かあれば念じろ」
全く動じない声でルードが言った。
ルードの薬指にも同じ指輪が嵌められているんだけど……
「えっ、でも」
「教会では何があるかわからないからな。絶対にコンスからは離れるな。コンスに勝てる奴は我が国では騎士団長くらいしかいない。教会の奴らではコンスの相手にもならないからな……」
ルードは私に念押しした。後、二、三注意事項を私にしてくれたんだけど、私の頭はパニックになっていてほとんど聞こえていなかった。
この国では違うのかもしれないけれど、左手の薬指の指輪は前世日本では婚約指輪や結婚指輪を嵌めるところなんだけど……
でも、ルードの感じではこの国では違うみたいだ。
でも、ルードとおそろいの指輪しているって絶対にまずいって!
「本当に気を付けろよ」
私の動揺を無視してルードは行ってしまったのだ。
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ここまで読んで頂いてありがとうございました
新作『婚約破棄されたので下剋上することにしました』
https://kakuyomu.jp/works/16818093090691950432
リディは弱小国とはいえこの国の隣の独立国の王女だったが、学園の卒業パーティーにおいて婚約者の王太子からエスコートできないと言われる。元々この国の前国王が強引にこの婚約を推し進めてきたのに、王太子はリディには全く興味を示さずに、かわいげのある公爵令嬢ばかり構っていた。その上配属されたのは何故かクラスも平民が圧倒的に多い最低のEクラス。弱小国の王女のリディは自国のことを思って王太子と公爵令嬢の取り巻き達に嫌がらせをされてもじっと我慢をしていたのだ。
そのリディは何故か剣術部にやってきた王太子に脳天を容赦なく一撃されたショックで前世の記憶を取り戻す。なんとリディはゲームの中の悪役令嬢だったのだ。そして、ヒロインの公爵令嬢を虐めまくっていたのがばれて、卒業パーティーで婚約者の王太子から婚約破棄の上、断罪されて娼館送りにされる運命だった。
でも、目を覚ましたのはパーティーの前日、対策しようにも、既に時間が無かった。
もうこうなれば出たとこ勝負だ。最悪断罪されたときはされたときだ。
リディは腹をくくった。
そして運命の卒業パーティーでリディの運命はいかに?
ゲーム通り断罪されるのか? それとも……
婚約破棄された弱小国だけど最強王女がペットの竜と聖剣片手に下剋上するお話です。
読んで楽しんで頂けたらうれしいです。
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