第37話 魔術実技で誰でも出来る灯り魔術が全然出来ずに焦りました
その日の2時間目は魔術実技の時間だった。
生まれて初めての魔術実技の時間だ。
私は朝からとても楽しみだった。
魔術と言えばファンタジーの世界だ。
前世日本では当然魔術なんて無かったので、私はとても楽しみにしていたのだ。
そう、せっかく転生したのだから魔術が使えるようになりたいと私は前世の記憶が戻ってからずっと思っていた。
私は貴族にもかかわらず、まだ魔術を使ったことがなかった。
ルードは学園入学前に普通に魔術が使えていたけれど、私は全く使えない。
親が教えてくれなかったというのはあるけれど、家にあった魔術実技の本を親や義妹に隠れて懸命に読んではみたのだ。でも、何が書いてあるか全然判らなかった。
それでも、なんとかなるだろうといろいろやってみようとはしたのだ。
でも、全然出来なかった。
おかしい、普通は転生したら何も考えずに魔術が出来たり、チートになって、すぐに凄い魔術が使えるようになるはずなのに、出来なかったのだ。
いくら。転生したからと言って、やはり、魔術は習わないと使えるようにはならないらしい。
だから今日のマルタン先生の授業はとても楽しみだったのだ。
「よし、全員揃っているな」
魔術実技の訓練場で、E組の生徒40人は揃っていた。
「魔術実技の最初は灯りがつけられるかどうかだ」
先生は全員を見渡した。
なるほど、最初は明かりだったんだ。
私は確かファイヤーボールを作ろうとしていた。
「灯りが一番基本だ。灯りをつけるのが一番簡単だからだ」
そうなんだ。必死に火球を作ろうとしていた私は基本ではなかったようだ。
だから出来なかったんだ。と私は一人で納得した。
「まず、先生が見本を見せるからよく見ておいてほしい」
先生はそう言うとみんなが見えるように手を差し出して、
「ライト!」
と唱えたのだ。
先生の手のひらには蝋燭の灯のような灯りが光っていた。
「どうだ。全員見えたか?」
全員を見渡した。
「「「「はい!」」」」
全員元気よく返事した。
「では、次は先生といっしょにやってみよう」
私でできるのだろうか?
私は少し心配だったが、心の底ではとてもワクワクしていた。
「ライト!」
「「「「ライト!」」」」
先生の言葉に続いて皆唱えた。
でも、私の手には何も光らなかった。
しかし、コンスの手にもポピーの手にも灯りが灯っていたのだ。
「よし、もう一度だ。ライト!」
「「「「ライト!」」」」
私は今度も手には何も起こらなかった。
えっ、なんでだろう?
いや、焦ってはいけない。
私は深呼吸をした。
「もう一度、ライト!」
「「「「ライト!」」」」
私の手のひらは何も変わらなかった。
「よし、次は出来なかったものだけだ。出来たものはその場で座っていいぞ」
驚いたことに半数くらいの生徒が座ってくれたのだ。半分の生徒ができるようになったと知って私は少し焦りだした。
「ようし、心のなかで蝋燭の明かりを思い浮かべるんだ。ライト!」
「「「ライト!」」」
「あっ、先生できました」
一人の生徒が叫んでいた。ヘレナだ。
ヘレナは嬉しそうにはしゃいでいた。
ええええ! 私出来ていないよ。友達の中で出来ていないのは私だけになった。
私は更に焦りだした。
「ようし、出来なかつたものはまた一緒にやるぞ。ライト!」
「「「ライト!」」」
出来なかった。
「もう一度、ライト!」
でも、次でも私は出来なかった。
10回やって10人くらいが出来なかった。
ええええ! どうしよう。全然出来ない。
さすがの私も焦りだした。
「よし、出来たものは、確実にできるまで何回もやってくれ。出来ないものは前に来てくれ」
出来たものは各々勝手に明かり魔術を練習し始めた。
出来ない私達は先生の前に集まった。
周りをぐるっと見た感じ、平民の子が多そうだった。
「心の底から灯りが灯ると信じて唱えるんだ。行くぞ、ライト!」
「「ライト!」」
心の底から出来ると信じたつもりでやるが灯りは灯らない。
私は何度もやってみた。
「ライト!」「ライト!」「ライト!」
でも全く手は光る素振りすらしなかった。
「うーん、クラウディアはまだまだ自分の魔術の力を信じられていないのではないか?」
先生がアドヴァイスしてくれる。
でも、そんな事言っても、魔術は使ったこともないし、私はできるかどうかわからないではないか?
私がそう聞くと、
「そこが駄目だ。絶対にできると信じてやるのだ」
そんな精神的なことなんだろうか?
私にはよく判らなかったが、マルタンの言うようにやってみた。
でも、できない。
結局、その日はただひたすら「ライト!」と唱えさせられた。
でも、私は出来なかった。
一人二人と出来ていく中で、私一人だけが出来なかったのだ。
焦れば焦るだけ出来なくなるという悪循環だった。
「何しているのよ。クラウ、こんなの簡単よ」
ヘレナが言ってくれるんだけど、全然出来ない。
皆が憐れむように私を見てくれた。
結局私一人が出来なかったのだ。
「うーん、クラウディア。大丈夫、必ず出来るから。自分を信じて練習するんだ。
判ったな」
マルタン先生は次の授業までの宿題にしてくれたんだけど、ええええ! 全然出来ないんだけど、出来なかったらどうなのよ!
私ってこの世界の不適合生なの?
魔術が使えなくて退学とかあるんだろうかととても不安になったのだった。
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