第38話 灯り魔術の練習しようとしてルードの胸の中で眠ってしまいました
私は一人だけ灯り魔術が使えなかった私はとても落ち込んだ。
「何を落ち込んでいるのよ」
「そうだぞ、クラウ。お前ならすぐに使えるようになるから」
「そうよ。灯り魔術くらいすぐにできるようになるから」
出来た三人はいとも簡単に励ましてくれた。
「何言ってくれるのよ。皆出来るからって……
私、魔術が出来る気がしないんだけど」
私がむっとして反論すると、
「大丈夫だって、出来ると思ってやってみれば出来るわよ」
「そうそう、クラウならできるから」
ヘレナとポピーが他人事よろしく言ってくれた。
「灯り魔術が出来ると、他の魔術もすぐに使えるようになるぞ」
「そうそう、なんか魔術が繋がるっていうか、カチンと繋がるのよね」
「えっ、そうなの?」
二人に今度はヘレナが聞いていた。
私にはポピーが何を言っているか全く判らなかった。
「ヘレナも灯り魔術が出来た時になんか感じなかった?」
「そう言えばカチリと頭の中で何かがつながったような気がしたわ」
「そう、それよ」
「灯りさえ灯せるようになれば、他の魔術もすぐに覚えられるようになるからな」
3人で盛り上がっているんだけど、でも、灯り魔術が出来なかったらどうなるの?
それって、灯り魔術が出来なかったら、魔術は全然出来ないってことじゃない……
私は唖然とした。
出来る魔術の多い少ないあるけれど、私が知る限り魔術が使えない貴族はいない。
平民でも学園に来る者は皆魔術が使えるそうになるそうだ。
魔術が使えなかったら貴族としては失格だ。
魔術が使えなかったら、下手したら貴族界にはいられなくなるんじゃないの!
というか、魔術が使えなかったら雇ってくれるところもないかもしれない。
就職にも響くだろう。
どうしよう?
私はとても不安になったのだ。
「えっ、灯り魔術が全く出来なかった?」
放課後、補講の時間に私が心ここにあらずという感じだったのを、ルードが注意してきたので私は素直に報告したのだ。
「そんな訳無いだろう。クラウなら普通に使えるはずだぞ」
呆れたようにルードが言ってくれたんだけど……
「だっていくら練習しても使えないんだもの」
私がむっとして言うと、
「大丈夫だと思うぞ。クラウの祖母はライゼマン公爵家の出だし」
後ろの独り言はモゴモゴ言っていて聞こえなかったけれど……
「なら、やって見せてみろよ」
ルードが言うから
「ライト!」
自信なさげに唱えても当然のごとく何も出なかった。
「当たり前だろう。そんな今にも消えそうな声で唱えても出来るわけはないだろう。もう一度」
「ライト」
「もっと大きな声で」
「ライト!」
しかし声を大きくしても出来なかった。
「無理じゃない!」
私がむっとして言うと
「うーん、そうだな。最初は必要に迫られないと出来ないのかな?」
そう言ってルードは立ち上がった。
何をするんだろうと見ていると、灯り魔道具のスイッチのあるところに歩いて行った。そして、スイッチを切ってくれたのだ。
ぱっと電気が消える。
その瞬間、部屋が真っ暗になったのだった。
「キャッ」
思わず私が悲鳴をあげた。
「ルード、いや! 暗いのは嫌なの!」
私がパニックになって叫ぶ。
知らずに涙が溢れてきた。
継母が私をいじめる時にむち打ちの刑の前は、真っ暗な部屋に私を一人にして放置してくれたのだ。
その時の恐怖が蘇った。
あの時は本当に怖かったのだ。
「ライト!」
ルードが灯り魔術をつけてくれた。
「えっ、どうしたんだ、クラウ?」
泣き出した私の顔を見て驚いてルードが駆け寄ってきた。
「もう、意地悪するルードは嫌い」
私はそう言うとルードの胸を思いっきり叩いた。
「悪かった、悪かったから」
ルードの胸を叩く私をルードは軽く抱いてくれた。
そう言えば子供の頃もルードが一人でさっさと走っていって、森の中で私が一人にされたことがあった。
その時泣き出したら、慌てて戻ってきたルードが抱きしめてくれたのだ。
私の背中をルードが軽く叩いてくれて、私の涙がなんとか止まった。
「大丈夫か? クラウ」
ルードはそう言うと私の涙をハンカチで拭いてくれた。
「いきなり灯りを消さないでよね」
文句を言うと、
「判った。悪かったよ」
「本当にいつもルードは意地悪なんだから」
上目遣いにルードを恨めしげに見ると
「いいや、本当に申し訳なかった。真っ暗にしてみたら必要に応じてクラウができるかなと思ったんだ」
「何もいきなりやることないじゃない」
「悪かったよ。次からちゃんと前もって言ってからやるから」
「ええええ! 暗いのは嫌だ」
私がルードの声に少し怒って言うと
「そうは言っても灯り魔術は出来たほうが良いだろう?」
「それはそうだけど……」
私が頬を膨らませた。
「クラウは暗いの怖がっていたっけ」
「色々あったのよ」
ルードに私が答えると
「すまん。継母絡みだな」
ルードの声に私は仕方無しに頷いた。
「本当に悪かった」
そう言うとルードは私をぎゅっと抱きしめてくれた。
ルードの腕の中は暖かかった。
私はほっとした。
そして、なんかホッとした途端最近眠れていなかったのか、ルードの胸の中で眠ってしまったのだ。
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