第34話 せっかく助けてくれたのにルードが私の宿題が出来ていないと怒り出し、側近に送ってもらう途中で令嬢の集団に出くわして明日からの事を考えるとうんざりしました

私はルードに抱きかかえられるように外に連れ出された。

そして、そのままルードといつも勉強する部屋に連れて行かれたのだ。


「ルードありがとう」

私は助けてくれたルードにお礼を言った。


「いや、助けに行くのが遅くなってすまなかった。状況がどうなったか確認するのに思ったよりも時間が取られたんだ。それに、クラウがどの部屋にいるかも判らなくて、探すのに本当に時間がかかってしまった」

ルードが謝ってくれたけれど、肝心な時にちゃんと助けてくれたので私としては本当に助かった。


「でも、クラウにお守り渡しておいて本当に正解だったな。聖女があんな事するとは思わなかった」

ルードによると私のお守りで弾き飛ばされた聖女は保健室で気づいて大声で私に突き落とされたと発言していたそうだ。


「まあ、それはすぐに訂正されるだろう」

ルードによと今回、私を突き落とそうとしたのが聖女だと判って、それなりの責任を取らされるそうだ。

「教会にもじっくりとお灸を据えると母上も言っていたしな」

「えっ、母上って?」

「あっ、こっちの話」

ルードが慌てて首を振った。


「それよりもクラウ、ちゃんと勉強はしてきたんだろうな」

「えっ」

私は唖然とした。あんな事があったのに、まだ勉強するつもりなんだろうか?

「まさかやっていないというわけではないだろうな」

なんかルードの視線が怖いんだけど。

でも、あんなことのあった後だし、せっかくルードが助けに来てくれて、私の中でルードの株は凄まじく上昇していたのに……

今から勉強するの?

嘘でしょ!

でも、本当に勉強が始まってしまったのだ。


「何だ、クラウ、全然覚えていないじゃないか!」

「いやいや、ちょっと、昨日は調子が悪くて」

私が笑って誤魔化そうとしたが、

「昨日覚えていたからって、宿題は1日くらいやらなくてもいいと思ったんじゃないだろうな」

ムッとしてルードが聞いてきたけれど……


あなたが余計なお守りなんて渡したから気になって勉強が進まなかったなんて言えなかった。


「クラウ、本当に判っているのか!」

ルードのお説教がヒートアップしてきた時だ。


大きなノックの音がしたのだ。

ルードの側近のカスパーだった。


「ルード、大変だ。お前の母上が……」

「何だと、母が?」

私にはよく聞こえなかったが、ルードが慌てているのが判った。

ルードも自分の母には弱いらしい。

私は他人事だった。


「くっそう、仕方がない。クラウ、すまん。今日の補講はここまでだ。明日続きをやるから今度こそちゃんと覚えておくんだぞ。カスパー、悪いがクラウを寮まで送ってやってくれ」

ルードはそう言うと、慌てて、出て行った。


「あの、カスパー様。寮などすぐそこですから、別に送っていただかなくても」

まだ明るいし、別に必要はないだろうと私は思ったのだが、

「いえ、あのようなことがあった後ですから、そのようなわけには参りません」

カスパーは私を送って行こうと、渡り廊下を歩き出した。


カスパーもイケメンの男子生徒だ。確か帝国のフィッシャー伯爵家の嫡男で、ヘレナによるとこのゲームの攻略対象の一人だ。

確か、私を助けにカッセルまで来てくれていた。


「カスパー様には私を助けにわざわざカッセルまで来て頂いて有難うございました。その時にお礼ができていなくて申し訳ありません」

私が謝ると

「いえ、私はルードについて行っただけですから」

カスパーは謙遜してくれた。

イケメンが謙遜すると本当に格好良い。わざわざ属国の男爵家の令嬢を助けるために帝国の高位貴族が来てくれたのだ。普通はありえないことだった。

なのに、カスパーはそれを鼻にかけることもなく平然と言ってくれた。

あの聖女に爪の垢を煎じて飲ませてやるたいくらいだった。

私がそう思った時だ。


前から女の集団がやって来たのだ。

なんとその女はこの前私を取り囲んだラーラだった。


「な、なんであの女がカスパー様と一緒にいるの」

「信じられませんわ」

「ルード様を独り占めするだけでは飽き足らずに、カスパー様にまで魔の手を伸ばすなんて」

外野が色々言ってくれた。


私は青くなった。

こんなんだったら送ってもらうのではなかった。


「ああら、カスパー様。貴方様ともあろうお人が、聖女様殺害未遂を犯したその女と何故一緒にいらっしゃいますの?」

ぎろりとラーラが睨みつけてくれた。

「何を言われるのです。それは冤罪だったと先生方も判断されましたよ」

「えっ、そうなのですか」

ラーラは聞いていなかったみたいだ。

「でも、そんな疑いのあった女を送られるなんて」

「いや、たまたま、そこでお会いして、寮までお送りしているだけですよ」

なんでもないことのようにカスパーは言い訳してくれた。


「そうですの。まあ、なにもないと思いますけれど、貴方様もなにかされないようにお気をつけ遊ばせ」

そう言うとラーラは私に鋭い一瞥を浴びせて歩いて行った。

その取り巻きたちもそれについて行ったが、私の隣を通る時に私に鋭い視線を私に浴びせてくれた。



「まずい奴らに会ってしまったな」

カスパーが唇を噛んでいた。


「ごめんなさい。カスパー様。ご迷惑をおかけしまして」

私が謝ると、

「いや、俺は良いんだが、明日からクラウディア嬢が苦労するだろう」

「いえ、私は慣れておりますから」

「本当に申し訳ない」

寮まで送ってくれた後に、カスパーは謝ってくれた。


まあ、今まで色々虐められてきたのだ。それが少しきつくなる程度だろう。

私は楽観していたのだ。

予想していたよりも大変なことが起こるなんて思ってもいなかった。

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山場です。

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