第18話 オリエンはコンスのおかげで優勝しました
私達は壁の前でピクピク震えている騎士たちを後は先生に任せて、防具を脱ぐとゴールの講堂に向かったのだ。
途中でふらふら歩いているルードを見かけた。
横であのピンク頭が自分の胸を押し付けてルードと一緒に歩いていた。
私はそれを見て少しだけムッとした。
まあ俺様ルードの事なんてなんとも思っていないし、私はルードとは幼馴染なだけだけど……
でも、私に胸がないからって、何も胸の大きい子と一緒にいちゃいちゃ歩くことはないじゃない!
ムカムカしたので、私は思いっきりルードを叩いてやろうかと思ったけれど、流石に高位貴族の令息を叩くのはまずいと思って止めたのだ。
「すまん!」
でも、コンスが思いっきり二人にぶつかってくれたのだ。
「キャー!」
二人は倒れてピンク頭の上にルードが押し倒した形になったのだ。
それもルードの手がピンク頭の両胸に置かれてその豊かな胸の間にルードの顔を挟み込む形になったのだ。
「まあ、ルード様ったら、まだ日が高いというのに、積極的ですのね」
喜んでピンク頭は更にルードの頭を抱こうとした。
「止めろ! コンス、お前よくも」
「急いでいる私の前でイチャイチャして邪魔した貴様が悪い」
「イチャイチャしとらんわ。貴様が俺の食事を取り上げてくれたおかげで、俺は今日は一口も食べていないのだぞ。それで少し気分が悪いんだ」
「ふんっ、そんな事は知らん」
そう言うとさっさとコンスは歩き去った。
「おい、クラウ、助けてくれ」
「ふんっ」
本当は高位貴族を助けなければいけないのかもしれないが、ムカついていた私もコンスを真似て無視して通り過ぎた。
「ブリアック、助けろ」
仕方無しに、ルードは一緒にいたもう一人のメガネの男の子に頼んでいた。
「ほっておいてよ!」
ピンク頭は邪険にしていたが、ブリアックはルードを助け上げたみたいだ。
「何だ。もうブリアックまでいるんだ」
私の横でヘレナがまた何か変なことを呟いていたが、私はよく聞こえていなかった。
そのまま私達はトップでゴールしたのだ。
2位にルード等の3人が入ってきた。
何でもクラスによって行くところは別々で、やることも違ったみたいだ。
剣技が課されたのはD組とE組で、最初にやったD組はみんな負けて、10分間残らされたそうだ。
私達のE組は最初にコンスが最精鋭の騎士たちをふっとばしたので、残りの騎士達が騎士志望の男の子たちにやられて、最後は対戦相手がいなくなって、大半が無条件で通過できたのだ。
悲惨なのはアデライド先生の礼儀作法テストもそうで、ちゃんとしたカーテシーが出来るまで絞られて20分以上かかった者もいたとか。
多くの生徒たちは途中で時間切れで講堂に集まってきた。
「皆さん、オリエンテーション、お疲れさまでした。少しは学園に慣れて頂きましたか?
それでは、ここで、成績の発表です」
司会のマルタン先生が促すと学園長が壇上に上がった。
「皆さん。オリエンテーションはいかがでしたか……」
また長い学園長の挨拶が始まった。
でも、下で先生たちが必死に手を回している。
「もう少し話したいところではありますが、時間がないそうです。
では今回は学園始まって以来ですが、なんとEクラスの優勝です」
途中でやめた学園長が報告してくれた。
「やったー」
「凄い」
「やったわ」
私達の周りは皆、飛び跳ねて喜んだ。
私も恥ずかしかったけれど、コンスやヘレナに思わず抱きついていた。
「嘘だろ!」
「なんで成績最下位の奴らが」
「コンス様が騎士の先輩を弾き飛ばしたそうよ」
「先輩たち、半死半生の目にあったそうよ」
「私達も逆らったらどうなるか……」
最後は皆コンスを唖然と見ていた。
「2位はAクラス、以降BクラスCクラスDクラスの順番でした」
先生が淡々と成績を発表してくれた。
「では優勝のEクラス、代表の方、前に出て下さい」
「えっ、誰が出るの?」
「当然コンス様だろう」
「騎士を全員一撃で弾き飛ばしたコンス様」
「コンス、頑張って!」
「えっ、私が出るのか?」
「当然でしょ」
私達、皆に押されて、コンスは仕方無しに前に出た。
そして、表彰状を渡されて照れていた。
「では、コンスタンツェさん。優勝の喜びの声を」
「えっ、私ですか?」
担任のマルタンの声に促されて仕方無しに、コンスはマイクを握った。
「Eクラスの皆、今回はみんなのチカラで優勝しました。
これを皮切りに総合優勝目指して頑張りましょう」
「「「おおおお」」」
なんか男性中心に盛り上がっている。
「ねえ、総合優勝ってどうなるの」
「これからいろんなイベンドがあってそれを全て点数化して、学年の最後に優勝を決めるのよ」
「そうなんだ」
知らなかった。そんなこともあるんだ。
「あなた何も読んでいないの?」
「昨日も補講のことがあるから、必死に覚えていたのよ」
「えっ、補講って、今日はこの後レセプションがあるのよ」
「レセプション?」
「新入生の歓迎のパーティーよ。流石にお酒は出ないけれど、皆着飾って参加するのよ。あなたも衣装持ってきたでしょ」
「……」
私はその言葉に固まってしまったのだ。
そんなの聞いていないよ。ルードも教えてくれたら良かったのに!
そんな余裕もなかったかもしれないけれど……
でも、補講のことよりも前にやることあるじゃない!
そんな衣装は無かった。
ハイデマリーが普段着等は買ってくれているとは思うが、高価な衣装までは揃えてくれていないだろう。
どうしよう?
私は真っ青になったのだ。
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山場です。
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