男爵令嬢に転生したら実は悪役令嬢でした! 伯爵家の養女になったヒロインよりも悲惨な目にあっているのに断罪なんてお断りです
第16話 食堂でピンク頭に追われたルードにぶつかられて、頭の上からシチュウをぶっかけました。
第16話 食堂でピンク頭に追われたルードにぶつかられて、頭の上からシチュウをぶっかけました。
40人の自己紹介が終わった。身分を言わずに名前だけの紹介だったので、私には本当に誰が貴族で誰が平民だかまるで判らなかった。
午後からはオリエンテーションということで、最後にその班分けが決められた。
私は隣のコンスタンツェとヘレナの3人で回ることになった。
「コンスタンツェさん。ヘレナさん宜しくお願いします」
私が二人に頭を下げると
「こちらこそ宜しくな。クラウディアとヘレナであっているよな。私のことはコンスと読んでくれ」
「コンス様ですか?」
ヘレナが聞いてきた。
「いや、呼び捨てで良い」
「そんな公爵家の令嬢を呼び捨てなんて出来ません」
私はヘレナの言葉でコンスが初めて帝国の公爵家の令嬢であると知った。
「一緒のEクラスの仲間じゃないか問題ないだろう。なあ、クラウディア」
「コンス様。私の事はクラウと」
「じゃあ、私もコンスだ」
「コンス」
私もヘレナも無理やり、コンスにそう呼ばされていた。
私達は食事を取るために学食に向かった。
学食は凄まじく混んでいた。
「凄いな」
呆れてコンスが呟いた。
「私とクラウで並んでいますから、コンス様は席を取っておいて下さい」
ヘレナが言うが、
「いや私も並ぼう。これだけ混んでいると離れる二度と見つけられそうにない。それとヘレナ、私はコンスだ」
「でも、周りの目があります」
「私が良いと言っている。学園にいる間くらい、自由に過ごしたいしな。クラウやヘレナは婚約者はいるのか?」
コンスがいきなり聞いてきた。
「いるわけ無いです」
私が首を振った。
ヘレナもいないみたいだ。
「コンスはいらっしゃるのですか?」
「おいおい、途中から敬語になっているぞ」
「だって、お相手はどのみち高位貴族の方でしょう?」
「こんながさつな私に婚約者がいるわけはないだろう。父は必死に探そうとしているみたいだがな」
コンスは笑って言った。
「それよりも、クラウはルードと親しいのか」
コンスがまた、いきなり聞いてきた。
「えっ、ルードですか」
私は一瞬詰まった。
なんかルードという名前を聞いて、周りが急に静かになったような気がした。
「親しくはないですよ」
私が否定すると、
「でも、クラス分けの時に手を繋いでいたじゃない」
ヘレナが聞いてきた。ヘレナもよく見ている。
「違うわよ。あれは私がクラス分けのテストで最下位だったから連行されたのよ」
私がきちんと説明した。
「連行って何?」
「ルード様は私を助けていただいたことがあって、今回この学園を紹介して頂けたんですけど、私が最下位だったから、自分の立場上まずいから、成績を上げるためにこれから補講を毎日受けろと言いに来られただけです」
私は適当に真実を混ぜて誤魔化した。
人気のあるルードに補講してもらうなんて言ったらまた周りから何を言われるかわからないし……
「そうか。毎日、放課後に補講があるのか! 大変だな」
コンスは私に同情してくれた。
「ふーん、そんなのあるなんて聞いたことないけれど」
疑い深そうにヘレナが聞いてきたけれど、
「私も昨日始めて聞いて、下手したらアデライド先生の補講もあるかもしれません」
「クラウ、どんな事があってもアデライド先生の補講には私を付き合わすなよ」
コンスがマジな顔で言ってくるんだけど……
「それ私が言えると思います?」
「まあ、無理だろうな」
コンスは首を振ってくれた。
私達はトレイを受け取ると席を探して食堂を歩き回った。
今日は皆が同時に食堂で食事を取るので混むんだそうだ。これから時間帯も代わってくるしここまで混むことはないそうだ。
「あったぞ。あそこだ」
空席を目ざとく見つけたコンスがさっと動いていく。
私とヘレナは必死についていこうとして
「ルード様。私を置いて行かないで下さい!」
後ろから黄色い声が知っている名前を呼んだので、私が気になって振り返った所にトレイを持っていたルードがぶつかってきた。
「キャッ」「すまん」
私は盛大にルードにトレイごと頭からぶっかけていたのだ。
ルードはシチュウの皿を頭から被って真っ白になっていた。
「えっ」
私は昨日に次いでまたルードにぶっかけてしまったことと、私の昼食がぶちまけられてしまって唖然とした。
「クラウ、貴様昨日だけでなく、今日まで俺にぶっかけるか」
怒髪天に怒っているルードがそこに立っていた。
「えっ、今のぶつかってきたのルードじゃない」
「やっぱり仲いいんだ」
後ろのヘレナがポツリと言ってくれた。
「えっ、いや、そんなことはないわよ」
「そうだ。こんな女知らないぞ」
私とルードが誤魔化そうとした。
「もう、ルード様。私を置いていこうとするからこんな事になるのですよ。浄化!」
女の子が叫ぶと、ルードがあっという間にきれいになった。
「凄い、この子、ヒロインなんだ」
ヘレナのつぶやきが聞こえた。絶対にヘレナは転生者だ。
私は確信した。
でも、この子がヒロインっていうことはこのピンク頭がこのゲーム主人公なんだ。
私はまじまじとピンク頭を見た。
「これできれいになりましたよ」
ピンク色の髪の女の子はそう言うとルードにしがみついていた。
トレイ片手にでかい胸をルードの腕に押し付けていた。
もの凄く強引な女だということはよく判った。
「何を言うんだ。俺は仕事で忙しいんだ。なのに俺を追ってきたらこんな事になったんだろ!」
ルードが怒って言うと
「えっ、酷い。私が悪いっていうんですか? その子がドジなだけなのに」
「えっ、私?」
いきなり振られて私は驚いた。
「この子がわざとルード様にトレイをぶっかけたのに」
「そんな訳ないだろう。お前が悪いんだよ」
「そんな、ルード様、酷い。ウェーーーーン」
いきなり女が泣き出して私は唖然とした。
何なの? これは! ここは幼稚園なの?
さすがの私も唖然とした。
ルードも驚いて立っているし。
食事の時間もあまりない。
そもそも私の昼食はどうなるの?
私が呆然とした時だ。
「ルードいつまで食堂の真ん中で女の子を泣かしている?」
後ろからコンスが声をかけてきた。
「コンスタンツェ、お前」
ルードがきっとしてコンスを見た。やはりこの二人は知り合いだ。ルードも高位貴族だということが私にも判った。
「皆の邪魔だからとりあえず端につれていけばどうなの?」
コンスがルードに言った。
「いや、今のはどう考えてもこの女が悪いだろう!」
ルードが怒って言うが、
「仕方ないだろう。お前がきついことをいつたから泣き出したんだから」
コンスの声にルードは一瞬唖然としたが、
「お前な……」
そう文句を言いつつ、ルードは諦めたみたいだ。
ルードが女の子を連れて端に行こうとした時、その無事だったルードのトレイをコンスが取り上げたのだ。
「おまえ、俺の食事を」
「ルードがぶつかったからクラウの食事が無くなったんだぞ。これは当然クラウの分だろう。クラウに食事を抜かせるのか?」
コンスに言われて、私と食事を見比べたルードは諦めたみたいだ。
ピンク頭の女の子を隅に連れて行った。
「コンス良かったのかな?」
私が聞くと
「気にするな。レディファーストだ。あいつは一食くらい抜いても大丈夫だ」
あっさりコンスが言ってくれたので、私はルードの食事を美味しく頂いた。
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