第14話 クラス分けでいきなり副担任の礼儀作法の先生に注意されてしまいました
ピリリリピリリリ
私は目覚ましの音で叩き起こされた。
本当に眠い。
昨日は歴史の本を必死に覚えようとしたが、そんなの覚えられるわけがないじゃない。
一通り読むには読んだが、全くだった。
食事をする暇もなく、そのまま着替えて講堂に向かった。
でも、今日からは夢にまで見た学園生活だ。絶対にいいこともあるはずだ。
私は気分を入れ替えて楽しむことにしたのだ。
入学式は講堂で行われた。座る席はクラスごとだった。
私はEクラスの一番うしろに座った。
ざあっとクラスの面々を見るとテストの時に見た顔がたくさんあって、何故か私はホッとした。
あのゲームと違うと呟いていた青髪の女の子も、机に突っ伏して寝ていた黒髪の女の子もいたのだ。
挨拶は学園長のつまらない長い話の後は、イケメンの生徒会長の歓迎の挨拶だった。
何を話したかよりも歯がキラキラしていたことしか覚えていなかった。
流石に帝国の学園だ。顔もイケメンやきれいな子が多い。
なんと新入生代表はルードだった。
彼は勉強も得意らしい。
「キャー!」
「あれ、ルード様よ」
「ルード様と一緒に学べるなんて」
「お声かけられたらどうしましょう」
一年生の女の子が騒ぎ出した。すごい人気だ。
昨日は皆の前で連れ出されたし、私は背筋がヒヤッとした。
これから毎日補講を受けることがバレたら何を言われるか判ったものではなかった。
「静かに!」
司会のいかつい女の先生が注意した。
その途端皆が静かになる。
確か礼儀作法のアデライド・パーカー先生だ。とても厳しそうだ。
作法なんてやったことのない私に授業は中々大変そうだ。ルードも礼儀作法はアデライド先生に特訓してもらったほうが良いのではないかと言っていたけれど、そんなの無理!
「先生方、並びに諸先輩方、私達新入生は今日から誉れある帝国のこの学園の生徒になれました。
これほど嬉しいことはありません。先生方や諸先輩方のご期待にそうよう、精一杯努力して参りますので、私達に適切なご指導ご鞭撻賜れば幸いです。
また、先ほど学園長と生徒会長がおっしゃられたように、この学園に入ったからには身分は関係ありません。この学園にいる間は、たとえ王族であろうが、公爵家の子供であろうが、全てのものが平等なのです」
そう言ってルードは皆を見渡した。
「へええ、学園って身分差なんて関係ないんだ」
私が驚いてつぶやくと。
「そんな訳無いでしょ」
隣の青髪の女の子が私を馬鹿にしたように見てくれた。
「建前よ。下手なこと言うと後で虐められるわよ」
なるほど、やはりそうよね。建前は大切だ。
私は前世の記憶を思い出していた。
無礼講と言われた歓迎会でよった勢いで上司にハゲとか色々言って翌日怒られた事を思い出していた。
「私はせっかく学園に入学できたのだから、色々学生生活を楽しみたいと思います」
「嘘っ!」
「本当に!」
何故かルードの言葉に前の方の女の子たちが騒いでいた。
ルードと一緒に楽しい学園生活を送れると夢見ているのだ。
そう、だから補講は止めてほしい。
でも、私はあの意地悪なルードからは絶対に楽しい学園生活なんて想像は出来なかった。
少なくとも私には死の補講が待っているだ!
「ただし、学生の本分は勉強です。その点は忘れないで下さい」
そう言うルードがこちらを睨んだ。
私は思わず首をすくめた。
やっぱり補講はなかったことになっていない……
「その点も留意しつつ皆で切磋琢磨して、この学園をもり立てていこうではありませんか」
ルードの言葉に全員拍手した。
私は俺様ルードがこんなに立派な演説が出来たことに驚いた。
ついでに優しくなって補講も無くしてほしい!
その後は学園の諸々の説明があった後、私達は担任に連れられて教室に向かったのだ。
1クラスは40名、E組の半分は最後にテストを受けた者みたいだった。
げっ!
私の席がなんと一番前だったのだ。それも真ん中の……
どういう事?
私の左横は背の高いあのテストの間寝ていた黒髪の女の子だった。
そして、右横はテスト中ゲームと呟いてさっきも注意してくれた青髪の女の子だ。
一体どんな順番でこんな席順にしてくれたんだろう……
クラスはざっと見た感じ男のほうが多かった。
「俺はマルタン・ボダン、花の独身30歳だ。現在、嫁さん募集中だ。ただし、学園内の恋愛は厳禁だからな」
「ええええ! 学園内は恋愛厳禁なんですか」
私の後ろの女の子が叫んだ。後でポピー・ブルタンっていう帝国の子爵家の令嬢だと聞いた。
「それは先生と生徒限定だ。学生同士は自由にしていいぞ」
「マルタン先生。自由にしていいは言い過ぎです」
後ろからいきなり声がかかった。
驚いたことにそこにはあの礼儀作法のアデライド・パーカー先生が仁王立ちしてそこにいたのだ。
「アデライド先生、何故ここに?」
唖然としてマルタン先生が聞いていた。
「急遽学園長に呼ばれて、このクラスの副担任をすることに決まったのです」
「えっ?!」
マルタン先生は呆然としていた。
全く聞いていなかったみたいだ。
礼儀作法の先生が副担任なんて最悪だと私は唖然とした。
でも、私の横の黒髪の令嬢も頭を抱えていたんだけど、何かあるんだろうか。
「特にコンスタンツェさんとクラウディアさんの面倒はきちんと見るように言われています」
「えっ、私ですか?」
私は驚いて目を白黒した。
「はい、クラウディアさん、大きな口を開けたままにしない」
私はいきなり注意されて慌てて口を閉じた。
「クラウディアさん、注意されたら最初は返事です」
「はい」
「声が小さい」
「はい!」
私はやけで大きな声で返事していた。
楽しい学園生活になるはずが、それって最悪の学園生活じゃないだろうか?
私は全とに暗澹としたのだった。
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