第十四話

ノックの音に答えると、ドアがスライドした。

「美織。」

現れた母は、前見た時よりもやつれているように見える。

「ごめんなさい、お母さん。」

胸が、苦しい。

謝っても、謝っても、足りない。

「ごめんなさい。負担をかけて、ごめんなさい。いい子じゃなくて、ごめんなさい。お母さんとお父さんをつなぎとめられなくて、ごめ―――」

その時、何かが頭を包み込んだ。

遅れて、鼻に入ってくる香りで、母が私を抱きしめているのだと気が付く。

「美織。美織はね、そのままでいいの。私の―――お母さんとお父さんの、大事な娘なんだから。」

「でも―――」

だからと言って、負担をかけていい訳がない。

そんな言葉を、母は抱擁で再びさえぎった。

「いいの。大丈夫だから。愛は、偉大なのよ。」

愛。

わからない。

段々と薄れてゆく意識の中、母のささやき声が聞こえた。

「美織、愛してるわ。今まで気が付かなくて、ごめんね―――」

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