第十三話

何か、声が聞こえる。

ゆっくりと、目を開く。

知らないベッド、知らない天井、知らない香り―――

いや、私は、を知っている。

よく知っている。

最近、嫌というほど知った。

ここは、病院だ。

「おや、目が覚めましたか。お母さまをお呼びしますね。」

ちょうど来た医師が、止める間もなく出て行ってしまった。

母。

また、迷惑を、負担をかけてしまったようだ。

もう、自嘲すらできない。

こんな自分に、価値はあるのだろうか?

母も内心、負担だと感じていたのではないか?

あの時、いくら仕事との両立が大変だったといえども、倒れるほどのものではなかったはずだ。

つまり。

やはり、母が倒れたのは、私が負担をかけたからに他ならない。

次は、一体どうなってしまうのだろうか。

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