第三幕

第十五話

限界だった。

薄々、気が付いてはいたのだと思う。

でも、認めなかった。

認められなかった。

心が、拒絶していたから。

きっと、最後の抵抗だったのだと思う。

味覚がなくなったのも、食欲がなくなったのも、何も感情がわかなくなったことも。

薄氷の上を歩くように、慎重にしているべきだったのだ。

細く張られた糸で、つなぎとめられていただけだったのだから。

本当は、わかっていた。

でも、動けなかった。

これ以上、負担をかけたくなかったから。

いい子で、いたかったから。

いい子のまま、終わりたかったから。

もう、私に、『ただいま』を言う資格はない。

ごめんなさい。

ごめんなさい、お母さん。

ごめんなさい、お父さん。

ごめんなさい、みんな。

ごめんなさ―――

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