第九話

扉の前で深呼吸。

同時に、笑顔を作る。

「ただいまぁ~!」

どことなく、違和感を感じた。

リビングに入っても、物音がしない。

「お母さん!あ―――お母さん……?」

キッチンに入って、その理由が分かった。

先ほど感じた、違和感の正体。

「お母さん!」

慌てて、電話をかける。

119

たった三つだけなのに、指が震えて何度か失敗した。

久しぶりに、動揺した。

久しぶりに、涙が出た。

久しぶりに、感情を感じた。

なんでだろう。

わからない。

不思議だ。

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