第四話

「美織、お母さんの言うことをよく聞いて、いい子にするんだよ。」

いい子に。

父の言葉に、首肯する。

「じゃあ、また会おう。―――美春、美織を頼む。それから、」

父は何か言おうとして、飲み込んだ。

「いや、何でもない。」

両親が離婚する。

このことに、私は何の感慨も―――いや、何の感情も抱かなかった。

もう決まっていたことを、知っていたことをなぞっているだけのような、どこか他人事のような、なんとも不思議な感覚がしただけだった。

これを、おかしいと言うのだろうか?

いや、きっと言うのだろう。

自覚はある。

でも、もう、何も感じることができなかった。

まるで、心が凍り付いているかのようだった。

そして、それは永久に溶ける気がしなかった。

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