第4話 地下世界の住み処にて

 これまでの経緯を話し終わり、メカニックの反応を待つ。さぞや驚くだろうと思っていたけど、彼が驚いていたのは最初だけで今は「ふぅむ」と冷静な様子。僕は彼にもっと面白い反応を期待していたのだけれど、つまんないな。


「思ったより反応が薄いじゃん。念願のバター猫を入手したというのに!」


 少しオーバーかなと思いつつ、身振り手振りを使ってバター猫を指差す。それは相変わらず宙に浮いて回転を続けている。目を回したりはしないのかな? ちょっと気になる。


「まあ、そうだな……ちょっと考えてたんだ」

「考えてたって何を」

「天井の隙間から落ちてきたってことは、このバター猫は廃棄物ってことだろ? 妙じゃねえか」

「妙って何が?」


 僕が聞き返すとメカニックはやれやれって感じに首を振った。なんかムカつくな。

 

「お前馬鹿かよ。今まで捨てられなかったものが捨てられたってことは、いつもとは違うってことだ。ま、俺たちにとっちゃありがたいことだけどよ。上で何が起きてるか気にならねえか?」

「なるほどね。頭良いな。メカニック」

「ありがとよ。お前はもっと考える癖をつけろ」

「そう言われてもね。僕は体を動かす。君は頭を使う。それで上手く行くんだから、良いじゃないか」

「……ま、上手く行ってる間は、それでも構わねえんだろうけどよ」

「でしょー。上手く行ってる。それで良いのだ」

「良いのかねえ……」


 それから、持ち帰ったバター猫の使い道を話し合った。メカニックが近くのガラクタ置き場からバター猫専用ケースなるものを出してきた。専用だなんて、いつの間にそんな物を!?


「ずいぶん用意が良いじゃないか。君」

「エレベーターの修理をしてる間にな。設計図は手に入れてたんだ。地下にある部品でもバター猫専用ケースは作ることができた。問題は中に入れるバター猫を手に入れることだったが、その問題は今日、お前が解決してくれたってわけだ。ラビット」


 良いね良いね。ワクワクしてきた。ところで。


「バター猫専用ケースがあると何ができるの?」


 僕の質問にメカニックがずっこける。彼はソファーに尻餅をつきながら「お前なあ」と言ってため息をつく。


「前に説明しただろう。バター猫と専用のケースがあれば電力を作れる。電力は機械を動かすために要るエネルギーくらいに考えとけ。俺もいろんな資料をかき集めて読み漁ったが、お前に上手く説明する自信はない」

「そう? まあ良いや。これがあればエレベーターを動かせるんだね」


 メカニックは僕の言葉を肯定するように頷いた。それは実に良いこと。なら、居ても立ってもいられない!


「行こう! メカニック! すぐに準備をして上の世界に行くんだ!」

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