第3話 偏頭痛

 そんな小説を書くことを趣味にしている青年がいた。

 名前を、

「高橋新吉」

 という。

 彼は、子供の頃から小説を書きたいと思っていたのだが、悪い癖なにか、

「俺にできっこない」

 と絶えず考えるところがあり、いつも書きかけて、途中でやめていたのだった。

 実際に、

「小説の書き方」

 なるハウツー本を見ると、実際に小説を書きたいと思っていても、

「必ず途中で、皆挫折する」

 というようなことが書いてあるので、

「俺が挫折するというのも、無理もないことではないか?」

 と感じるのであった。

 つまり、

「俺に小説など書けるわけはない」

 という、まるで、三段論法のような結論を生み出すことで、却って、

「できなくても、当たり前だ」

 という気楽な気持ちになれるというものだった。

 ただし、挫折は何度もする。

「できなくて当たり前だ」

 と思うのだから、負の連鎖から始まっているのだから、逃げ道だけを作ってしまうのだから、

「何が正しいのか?」

 ということが立証されるわけもない。

 小説を書くことが、

「自己満足」

 に繋がっているということで、最初は、

「それでもいい」

 と思っていたが、できないというところから、つまりは、ゼロからの出発だと、できた時に、それが自信につながるということであった。

「負の連鎖から、さらに負の連鎖を重ねると、プラスのもなる」

 ということを、高橋は思い知った。

 要するに、

「マイナスをマイナスだと思わずに、プラスの逆だ」

 と思うことで、

「見えてこなかったものが見えてくる」

 と感じているのかも知れない。

 だから、

「マイナスの相乗効果として、まるで合わせ鏡のように思っていたのは、本当は、相乗効果を見せる方のマイナス」

 というのは、鏡の効果で、

「プラスに見えていたのではないか?」

 ということであった。

 そこには、

「鏡というものと、マジックミラーというものの違い」

 ということなのかも知れない。

 マジックミラーというのは、こちらからは見えるが、向こうからは見えないというもので、大きな錯覚を見せるものだ。この発想を応用すれば、

「鏡に映った時、左右は反転するが、上下は反転することはない」

 という不可思議なことになる。

 普通であれば、

「疑問に感じることではない」

 のだが、改めて言われると、

「確かにそうだ」

 ということになる。

 これは、

「マジックミラーのように、自分の姿が、透けて、反対から見えるからなのかも知れない」

 ということであった。

 最近、奇妙な病気、

「いや、病気というか、症状」

 というものが、世間で流行っていると言われている。

 それはどういうものかというと、

「急に目の前が見えにくくなり、まるでクモの巣が張ったかのように見えてきて、そのうちに暗くなったかと思うと、目の焦点が合わなくなるんですよ」

 と患者は、医者にいう。

 支社は、黙って聞いているので、患者が続けるのだが、医者が黙ているのは、

「このような話を散々聞かされていることで、大体の話の落としどころが分かっているので、逆に、その話のあらを探すというか、他の人との違いを少しでも探そうと、躍起になっている」

 と言ってもいいだろう。

 しかし、実際には、その粗が見つかるわけでもなく、話を聞いてみると、

「寸分狂わないような話だな。だったら、ここでいう言葉は他の人にも言った言葉と同じように」

「飛蚊症ですね」

 というだけのことだった。

 実際に、それをいうと、相手はうなずきはするが、納得しきれ倍のは、今までの人と同じことで、

「まるで、デジャブだな」

 と、医者は感じるのだった。

「飛蚊症」

 というのは、目の前にクモの巣が張ったようになると、焦点が合わなくなるというのは、まさに、患者のいう通りであった。

 患者が、納得がいかないというのは、

「その先があるのに、医者が聞いてくれない」

 と思ったからで、医者としては、そんなことはない。

「相手が、落ち着くのを待って聞くだけだ」

 と思うのだった。

 医者は分かっていた。

「この段階で医者にくるということは、少なからずの何か、精神疾患のようなものがあるからではないだろうか?」

 ということが分かっているからだったのだ。

 精神疾患と言っても、いろいろな病気が最近ではたくさんある。

 躁鬱症と言っても、ただのうつ病もあれば、完全に薬の投薬を必要とする、

「双極性障害」

 のようなものもある。

 さらには、双極性障害というのは、それだけを患っているというよりも、他の病気を併発している可能性が高く、そのため、何種類もの薬を服用している人がたくさんいるのだ。

 しかも、

「〇〇障害」

 というのもたくさんあり、それだけに、症状だけで、その病気が何なのかということを診断するのは、医者でもかなり難しいといってもいいだろう。

 特に、双極性障害おように、

「薬を絶対に必要とする」

 という人が、

「うつ病ですね」

 と診断されてしまうと、悪くなる一方である。

 しかも、

「医者のいうことだから」

 ということで信じ込んでしまって、他の医者に罹れば、分かることも、信じたせいで分からずに、

「取り返しのつかないことになりかねない」

 ということになるであろう。

 さらに、双極性障害というのは、

「うつ状態と躁状態を繰り返す」

 というもので、一番怖いのは、

「鬱状態から、躁状態に変わる時だ」

 と言われている。

 というのは、

「躁状態になると、一瞬、病気が治った」

 と思うのだろう。

 しかし、実際には、治ったわけではなく、もっと危険な状態になるのだ。

 つまり、躁状態というのは、

「今の自分なら、なんでもできる」

 と感じるのだ。

 しかも、その前のうつ状態が、

「俺は何をやっても、ダメなんだ」

 という気持ちで悶々としているのだから、躁状態になると、今度は

「なんでもできる」

 ということで、実際には、まだ抜けきっていないうつ状態、いわゆる、

「混合状態」

 というのがあるので、

「死にたい」

 という気持ちが残っていたりするのだ。

 だから、そんな状態で、

「なんでもできる」

 と思うのだったら、その気持ちは、

「今なら、死ねる」

 と思うのだ。

 だから、衝動的に自殺を試みたりするのではないだろうか?

 考えてみたら、自殺する人の中には、

「ハイな状態」

 になることで、電車に飛び込んだりするという人もいるというではないか。

 実際に、

「死にたい」

 と思っているわけではないのに、

「薬の副作用」

 で、衝動的に自殺をするというのもあったりした。

 昔、社会問題になった、

「インフルエンザの特効薬」

 として登場した頃の、

「タミフル」

 という薬は、その副作用から、

「衝動的に、マンションの自分の部屋から飛び降り自殺をする」

 ということが多く発生し、社会問題になったのも、

「記憶に新しい」

 と思う人も、少なくはないだろう。

 そういう意味で、衝動で自殺をするということがないように、今では研究が進んでいるわけだ。

「世界的なパンデミック」

 が襲ってきた時、ワクチン問題が大きく世間を二分したが、反対派の中には、この時の、

「タミフル」

 のような効果を恐れている人も多いだろう。

 何といっても、薬なのだから、本来であれば、

「数年の臨床試験期間を経て」

 というのが当たり前だが、そもそも、最初の初動の時点で、

「水際対策」

 という点で後れを取り、

「学校閉鎖」

 などという、

「いたずらに混乱を招くという状態に巻き込んだのは、どこの誰か?」

 ということである。

 急に、

「緊急事態宣言」

 というものを行ったり、

「海外でワクチンができた」

 と言えば飛びついてみたり、つまりは、

「海外がやることに、右倣えの状態だ」」

 ということである。

 海外から、

「日本は、一番先に突進しろ」

 と有事の際に言われれば、この国のソーリは、

「自分が逃げてでも、国民を盾にして、難を逃れようとするに違いない」

 ということである。

 それは、ソーリに誰がなっても同じことで、

「ソーリの自分が死んでしまえば、この国は﨑ゆかない」

 という、とんでもない勘違い野郎になってしまうことであろう。

「俺の変わりは誰もいない」

 と思っているのかも知れないが、

「お前の変わりなど誰でもできる」

 と言いたい。

「世界的なパンデミック」

 の最中、中傷画として、

「バイト急募」

 と言って、内閣が、

「ソーリのバイト」

 を募っているという設定で出されたものがあった。

「ただ、他の人が書いた原稿を、読むだけの簡単なお仕事です。読み間違えても大丈夫。給料が減ることはありません。誰にでもできるアルバイト」

 というような皮肉を込めたものがネットに出たりした。

「まさにその通り」

 と思った人は、きっとたくさんいることだろう。

 それこそ、

「表現の自由」

 が保証された、

「民主主義国家」

 ということである。

 他人に対しての誹謗中傷は許されないが、政治家というのは、

「批判されて給料をもらっている」

 ということでもあるのだ。

 何しろ、

「我々の税金で飯を食っていて、その税金で、政治を行うのだ。どっかのソーリは、それを日本人に使わずに、他の国にポンと渡すなど、言語道断なことをしているのだ」

「もちろん、日本人が、困っていなくて、お金が有り余っているのであれば、それでもいいのかも知れないが、今にも死のうとしている人がたくさんいるこの国で、その人たちに目を向けることをせずに、自分の海外での地位を保ちたいというだけの一心でそんなことをするのだから、言語道断を卓越している」

 と言ってもいいだろう。

 日本という国は、そんなに金があるわけではない。むしろ、

「潜在的な借金で、

「血を流しながら、先の見えない延命をしているだけ」

 と言ってもいい。

 この国の、年金問題、雇用問題、物価の問題と、問題は山積みであり、しかも、政府の言っていることは、いちいち、辻褄が合っていない。

 貧富の差は広がる一方で、完全に、

「民主主義の悪いところだけを背負ったような国ではないだろうか?」

 それを思うと、

「国民の三大義務って何だっけ?」

 ということになるであろう。

「教育」

「勤労」

「納税」

 というものが、根底から崩れていっている。

「教育」

 というのは、あくまでも、

「教育を受けるものは権利であり、受けさせることが義務なのだ」

 ということになれば、考えてみれば、今の時代は、

「先生ほどブラックな商売はない」

 と言われている。

 毎日の平均実働時間が、10時間というのが、そもそもめちゃくちゃで、しかも、すい明時間を削ってまで仕事をしていたり、

「休みなんてない」

 という人だっているくらいだ。

 教育する側がそのような状態で、権利として受ける方も、まともな教育が受けられるわけはない。

 勤労というものもそうだ。

「安い賃金で」

 とうことで、外人どもは雇うくせに、日本人は雇わない。

 しかも、今の時代は、人手不足が大きな問題になっていて、特に、

「少子高齢化」

 という問題もあり、企業の平均年齢は、どんどん上がっていくのだ。

 ということは、

「一人が定年退職すると、あとからどんどん続いていき、最終的イに、皆、定年退職後の再雇用」

 ということになる。

「終身雇用」

「年功序列」

 という考えがある程度崩壊してきたことで、会社も、後進を育てなくなった。

「どうせ、教育しても、辞めていく」

 ということからであろう。

 もっと問題なのは、

「もし、後輩が入ってきたとして、その人に先輩が教えるだろうか?」

 ということになるわけだ。

 寝移行序列ではないのだ。

 もしその人が本当に優秀で、仕事を覚えてしまうと、あっという間に自分が抜かれてしまう可能性があるわけだ。

 そうなると、

「自分の立場が危うくなる」

 ということで、後輩に何も教えなくなる。

 という、

「足の引っ張り合い」

 ということになるであろう。

 それを考えると、

「後輩が育つわけもなく、辞めていくことになるだろう。そうなると、舌が育つことはなく、自分が定年の時にはどうなるかということが、分かってきたときは、時すでに遅しということになるのだ」

 ということであった。

 というのは、

「会社というのは、60歳定年のところが多く、国からもらえる年金は、基本的には65歳からである。60歳からもらうこともできるが、1回がかなり安くなるということで、働かなければやっていけないのは同じことだ」

 ということだ。

 ほとんどの会社は、60歳を過ぎての再雇用では、

「3割カット」

 などということで、給料を下げ、

「契約社員」

 という扱いにしておいて、

「誰にでもできるような楽な仕事」

 を与える。

 というのが、今までだった。

 しかし、今はそうもいかない。

 というのは、

「バブル崩壊」

 があったのが、今から30年くらい前のことだった。

 その頃現場でバリバリやっていた人たちが、今では、

「定年退職」

 を迎えることになるのだ。

 だから、この年代の人口が、会社では、

「一番多い」

 ということになる。

 そうなると、

「再雇用という段階で、簡単な仕事しかしない」

 ということにしてしまうと、そのあとの人もみんなそうなると、会社の仕事が回らなくなるわけだ。

「数年後には、皆60歳以上で、契約社員だらけになる」

 ということであり、さらに、その5年後には、

「誰もいなくなってしまう」

 ということになる。

 それこそ、

「国破れて山河あり」

 ということで、人がいなくなった会社が、果たして存在しているかということになるのであった。

 だから、どんどん人が減っていくと、残っている人間に、一気にしわ寄せがくるわけで、

「去年までは、自分の仕事だけでよかったのに、今年は、3人分の仕事を押し付けられる」

 ということになってしまうのであれば、その人だって、

「こんな会社、辞めてやる」

 ということになるだろう。

「終身雇用でもないし、年を取ればとるほど、悲惨な状態になるのはわかりきっているので、だったら辞めてやる」

 と思うのは当たり前だということだ。

 そもそも、悪いのは会社である。

 こんな状態になるのは、誰だってちょっと考えればわかることであり、

「新入社員を入れて、教育する」

 ということをしなくなったことが、今の事態を招いているのだ。

「仕事がなくて、つぶれていく」

 という時代ではなく。

「仕事をする人がいない」

 という人手不足の問題から、

「会社がつぶれていく」

 という時代になってきたのだ。

 それが、今の、

「〇〇年問題」

 と呼ばれていることであり。その問題は、すべてに共通しているワードとして、

「人手不足」

 ということなのであった。

 特に、人手不足が深刻なのは、

「インフラ」

 の問題である。

「運送会社」

 であったり、

「タクシー、バス、電車、パイロット」

 などという専門的な職種で、インフラにかかわっている人が不足しているということで、

「徐陽があるのに、供給が不足している」

 という、今までにはないケースというものが、出てきているということだ。

 もちろん、

「少子高齢化」

 という問題があるのだろう。

 働き盛りの人たちが、相当少ないのだから、それは当たり前ということで、政府が言っていることも、

「辻褄が合わなくなるのだ」

 というのも、

「免許返納」

 というものを、ある程度の年齢になった人には推奨しているくせに、

「人手不足」

 ということと、

「年金問題」

 というものから、

「死ぬまで働け」

 と言われているのだから、それは、理論的に、

「辻褄の合わない」

 ということを言っているわけである。

 そんな世の中、いろいろな精神疾患を患うという人もたくさんいる。

 その中で、前述の、

「偏頭痛」

 のようなものが出てきて、一見普通の偏頭痛なのだが、

「どうも、何かが違っているようだ」

 ということを言いだした研究者もいた。

 実際に、患者と向き合っている医者の中にも、同じようなことを感じている人がいて。

「これは、新種の病気なのかも知れないな」

 という人もいたのだ。

 しかも、これは、日本人独特のもので、外人にも、

「偏頭痛」

 というのはあるが、今回のような症状は、外人には見られないということだということになっているのだという。

 実際に、この偏頭痛というのは、

「皆、片頭痛の後に吐き気を催して、気持ち悪くなって、トイレに飛び込む」

 というのだ。

 そんな状態が何回か続いているのを、まわりの人が見ているのだが、そこから先、

「なぜか、その人が行方不明になる」

 ということであった。

 確かにトイレに入って、嗚咽したのは間違いないようで、汚物は残っているのに、本人はその部屋にはおらず、

「その行方はまったく分からない」

 ということのようだった。

 それは、全国でも、最初は、ぽつぽつだったので、その共通性に誰も気づかなかったが、次第に行方不明者が増えてくると。その共通性はハッキリと見えてはくるのだが、その原因と理由に関しては、誰にも分かるものではない」

 ということになるのだった。

「人間消失事件」

 ということで、まるで都市伝説のようにささやかれるようになった。

 そもそも、警察も、分かってはいたが、混乱を避けるために、

「緘口令」

 というものを敷いていたが、どこから漏れたのか、マスゴミは、

「スクープ」

 として、すっぱ抜くのである。

 それを考えると、

「油断も隙もない」

 ということで、あっという間にいろいろなマスゴミが飛びついて、週刊誌であったり、テレビのワイドショーが、こぞって特集を組むものだから、警察も政府も、

「知らぬ存ぜぬ」

 では許されないということになるのであった。

 特に、

「テレビの効果」

 というのは結構なもので、特に最近のワイドショーというと、

「売れない」

 あるいは、

「かつては一世を風靡した」

 と言われる、

「お笑いタレント」

 が出てくるということが多くなってきている。

 そのためか、

「無責任とも思えるような発言が、尾ひれを付けて、あたかも正しいことのように報道され、それに週刊誌が食いつくことで、事態が急拡大して、変な方向に行ってしまう」 

 ということになってしまうのだろう。

 それを考えると、今回の、

「この偏頭痛が、いかに、人間消失事件に絡んでいるのか?」

 ということが、都市伝説のように語られるようになってくるのであった。


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